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【短文レビュー/邦画新作】『うちの弟どもがすみません』・・・「親の再婚相手の連れ子と同居」シチュだけは家父長制の価値観から逃れられないのか

トップ画像:(C)2024「うちの弟どもがすみません」製作委員会 (C)オザキアキラ/集英社

監督:三木康一郎/脚本:根津理香/原作:オザキアキラ
配給:松竹/上映時間:105分/公開:2024年12月6日
出演:畑芽育、作間龍斗、那須雄登、織山尚大、内田煌音、前田旺志郎、中島瑠菜、川島明、笛木優子

「親の再婚によってきょうだいとなったイケメンとの同居生活」という少女漫画の古典的シチュエーション(ただしイケメンは4人)なのだが、そこに至るまでの流れがいくらなんでも時代に取り残されている。再婚相手を自分の娘に初めて会わせるのが同居する当日、再婚相手に子供がいることを娘に伝えていない、同居から1ヶ月後には仕事の都合で未成年だけの生活をさせる。いずれも親としては非常識であるし、小学生も引き篭もりもいる家を放ったらかしにするのは虐待ですらある。

で、家の中で一番年上(長男とは同い年)となった主人公の高校生は、姉として認められるために、炊事洗濯に精を出すのである。はたから見ればヤングケアラーだが、こういうのを母性アピールとする時代はとっくの昔に過ぎ去ったはずでは。一応イケメンどもからは「頑張りすぎだよ」と嗜められるのだが、だったら飯くらい自分でよそえ。男4人がテーブルを囲んでいる中で女1人が何度も立ち上がって支度しているおかしな状況に気付け。前提となっている価値観が昭和なのだ。

単に描写が古いという点では、たとえば「転んだ拍子にキスするアクシデント」とか、なんか数年ぶりに見た気がする。直近だけでも『あたしの!』『矢野くんの普通の日々』のように、少女漫画原作のラブコメも時代の変遷に合わせてアップデートされているのに。それでも少女漫画の王道である「親の再婚相手の連れ子と同居」シチュエーションだけは、旧守的な家父長制の価値観からは逃れられないのだろうか。

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