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【短文レビュー/邦画新作】『グランメゾン・パリ』塚原あゆ子監督・・・ここまでストレートに嫌なやつが主人公なのは、昨今の邦画大作では珍しい

トップ画像:(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会

監督:塚原あゆ子/脚本:黒岩勉
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/上映時間:117分/公開:2024年12月30日
出演:木村拓哉、鈴木京香、オク・テギョン、正門良規、玉森裕太、寛一郎、吉谷彩子、中村アン、冨永愛、及川光博、沢村一樹

部下や取引先への当たりが強く人間性に問題のある管理職的な立場の人を主人公とするのは、塚原あゆ子監督の前作『ラストマイル』と同じなのだが、何かあるのだろうか。どちらも脚本は別の人なので、たまたまなのかもしれないけど。それにしても、ここまでストレートに嫌なやつが主人公なのは、昨今の邦画大作では珍しい。前段となる連続ドラマは未視聴なのだが、東京では人間的な成長とか経験していなかったのだろうか。

もちろん様々な事件や周囲の人々との交譲によって、自惚れていた主人公に心境の変化が訪れる展開となるし、それは一見するとベタな話のようではある。しかしよくよく思い返してみると、個々の出来事と、主人公の改心とが、あまりリンクしていないのだ。特にパティシエのパートでは壮絶な展開が起きており物語のメインを担っているが、ではなぜそれで主人公が変化するのかは、いまいち不明瞭である。他の件も含め、周囲の人たちの配慮や偶然によって勝手に問題が解決していて、それを主人公の手柄であるかのように意図的に錯覚させている。孤高の天才に惚れ込んで集まってきた仲間たちが必死でサポートしていく話であれば、それでいいのだけれど、表面上はそのように見せていないのが、なんか変。その辺りに塚原監督の邪悪さが潜んでると結論づけるのは穿ちすぎか。

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