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【レビュー/邦画新作】『遺書、公開。』(※ 軽くネタバレあり)・・・英勉監督は今回もまた王道の物語を解体する

トップ画像:(C)2024 映画「遺書、公開。」製作委員会 (C)陽東太郎/SQUARE ENIX

監督:英勉/脚本:鈴木おさむ/原作:陽東太郎
配給:松竹/上映時間:119分/公開:2025年1月31日
出演:吉野北人、宮世琉弥、志田彩良、松井奏、髙石あかり、堀未央奈、忍成修吾

※ 2025年2月10日以降は有料公開となります。

いきなりネタバレになってしまうが、本作の構造を端的に表せば『笑ゥせぇるすまん』である。平凡な人物が謎めいた存在によって念願の欲望を叶えてもらうも、そのせいで逆に人生を狂わされ、ついには押し潰されてしまう、よくある因果応報譚。ただし本作の場合は、本来の主人公が退場した後から始まり、押し潰した側にいる人々の多視点によって、すでに終わった物語の確認が行われていく。

王道の物語を別視点から捉え直し、批評的に解体と再構築を行なっていく。『ヒロイン失格』から『映画 おそ松さん』に至るまでの、英勉監督のライフワークが今回もまた繰り広げられているわけだ。そこには不自然なほど戯画的なオーバーアクトは欠かせない。なぜなら批評的な解体を行うには、まずその物語が純然たる虚構だと認識させなければいけないのだから。英勉監督は本作でも、いつもと同じ手順をきちんと踏んでいる。

舞台は、とある私立高校のとあるクラス。新学年となった初日に、2年生のクラスメイト全員と担任に匿名のメールが届く。そこには1位から25位まで、担任を含む全員の“序列”が記載されていた。それから半年後、序列1位だった女子高校生が学校内で自殺し、クラスメイトと担任の机の上に、それぞれ個別に書かれた“遺書”が置かれていた。彼女が死んだのはなぜなのか、ひとりづつ遺書を読み上げながら真実を探究していく。

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