歯医者でのできごと
今日は歯医者に行ってきました。
言っておきますが、私は歯医者が大の苦手です。
子供の頃、歯医者で激痛のため気絶したことがあり、その時の記憶がトラウマとなってて、今でも恥ずかしいくらい震えますし、大げさに痛がります。
と、言うわけで、いつも友人に付き添ってもらい、治療中は手を握っててもらうのです。
「いい大人が!」と笑われようが構いません。嫌なものは嫌なんです。
さて、この友人、いわゆる「動じないタイプ」で、生き様が飄々としていてクールに見えるタイプなのですが、天然と言いますか、時々とんでもない爆弾発言をします。
例えば、同じ町内の方が亡くなり、ポストにそのお知らせが入っていた時のこと。何度か顔を合わせたり、脚立を貸してもらったりしていたので、弔問に行った時です。
受付の方に、
「ポストにチラシが入ってたので来ました」
とか、しゃらっと言っちゃえるような人です。
また、動物病院に乗せて行ってもらった時は、診察に来ていた猫ちゃんが
「〇〇ドラ美ちゃーん」と呼ばれたら、ボソッとですが聞こえるくらいの音量で「ドラ美って・・・。」とか言っちゃいます。
こっちはハラハラです。
もちろん、本人にはまったく悪気はありません。
ゴーイングマイウェイ、というほどではないにしても、「あえて空気を読まない」と言う表現が似つかわしい感じです。
なので、美人(NANAの頃の中島美嘉さんに似ています)なのに彼氏ができません。できてもすぐにいなくなっちゃいます。
前置きが長くなりました、本題に戻ります。
今回の治療は、かぶせ物が取れてしまったので診察してもらったところ、根本から割れてしまっているため、抜歯するしかない、とのことで今日はその抜歯のための来院です。
その前に、歯科衛生士さんが他の歯の掃除をしてくれてる時のことでした。
私はこの掃除すら怖いので、友人に手を握ってもらいながら歯科衛生士のお姉さんに身を委ねたのですが、だんだんと口を閉じてしまうのです。
あごが疲れる、というのもあるのですが、ビクビクしてるうちに開けているつもりで、どんどん閉じてしまいます。
そうすると、歯科衛生士さんが、「開きますよー」と優しく声を掛けてくれます。
私が極度の歯医者嫌いで大げさに痛がるのをご存じなので、とても優しく、安心させるような話し方をして下さいますが、その表情からも手元からも緊張感が伝わってきます。
何度目かの「開きますよー」の時でした。
隣でそのやり取りを聞いていた友人が、ボソッと、
「安心してください、開いてますよ」
と言い放ちました。
「ブフッ!」と噴き出す歯科衛生士さん。
手元が狂うのを恐れたのか、すぐにあの、先の曲がった針のような器具を口から取り出しました。
気を取り直して、掃除を続けようとしますが、歯科衛生士さんの体は小刻みに震え、なかなか掃除に戻れません。
とうとう我慢できずに、「ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら声を出して笑い始めました。
緊張と静寂の中で放たれた一言が、クリティカルヒットしたようでした。
言葉を放った本人は、「なんでこの人笑ってんの?」みたいな顔で歯科衛生士さんを見てます。
「お ま え の せ い だ ろ う」
と、目で伝えますが、そんな時に限って目が合わない。
それが1分ほど続き、深呼吸をしながら掃除に戻ろうとしますが、「はい、行きますよー」と言われ、私が口を開くたびに、またクックッと笑いが起こります。
おそらく彼女の脳内では、私が口を開くたびに「安心して下さい」が再生されているのでしょう。
そのうち、掃除が終わるのを待っていた先生が異変に気付き、
「どうしたの?」
と声を掛けに来ました。
初老の、落ち着いた感じの先生で、とても優しく、治療の内容も詳しく説明してくれるので、歯科医の中では信用してる方の(失礼な話ですが)先生です。
もう半泣きの歯科衛生士さんに代わり、私が事情を説明して謝罪しましたが先生が「とにかく明るい安村」を知らないらしく、「安心して下さい」でなんでそんなに笑うのか、不思議に感じてるようでした。
とりあえず、進まないので別な歯科衛生士さんにバトンタッチ、その後、なんとか抜歯も乗り越え、帰り際にもう一度歯科衛生士さんに謝罪して、病院を後にしました。
まあ、「乗り越えた」というよりは、「恥ずかしさと申し訳なさの狭間でドギマギしてる間に終わった」という方が正確ですが。
帰りの車内、歯医者での出来事を振り返り、ひとしきり友人に注意をした後、「でも、おかげで抜歯から気が逸れてあっという間に終わった感じだった、ありがとね」と伝えると、ハンドル片手に無表情でサムアップ。
そういうとこだよねー、と思いつつ、口には出さない八神なのでした。
というわけで、今夜はこの辺で。
じゃわっとさんばばん!