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チンパンジーさんがあなたの記事にウキしました。

コキーン!

それは、逆噴射小説大賞の原稿を愛用のレッツノートで執筆中の出来事だった。

マウスのさらに右側に置いておいたスマホが通知音を鳴らしたので、目線だけを動かして画面を覗き、思わず二度見してしまった。

「チンパンジーさんがあなたの記事にウキしました。」

親の顔より見た「白地に黒のnマーク」の右側に、そう書いてあった。

「はぁ???」

咄嗟にイタズラだと判断した私は、軽い苛立ちを覚えた。
ようやく頭の中のモヤモヤが文字列を形成しはじめ、軽快にキーボードを打ち始めたところだったのだ。

「見間違いだ」と、心のどこかで思いつつ画面をタップしてみると、確かに私の書いた「バナナはドール、キウィはゼスプリに限る」というタイトルのどうしようもない記事に、「ウキ」がついていた。

ご丁寧に「スキ」のハートマークの隣に、歯をむき出して笑っているかのように見えるチンパンジーの顔マークがあり、数字が「1」になっていたのだ。

いやいやいや、まてまてまて。
noteにそんな機能はない。

そもそも、普通なら「記事のタイトル名」が出るはずで、「記事に」なんていう曖昧な書き方じゃなかったはずだ。

「こんな手の込んだイタズラ仕掛けて来るなんて~💕」

私の悪い癖が出た。
イタズラと言うのは、「仕掛けた側」の知性が試されている。

仕掛ける相手より知性が低いと、効果的なイタズラにはならないのだ。
裏を返せば、「私の知性も試されている」ということだ。

そもそもイタズラが大好きな私は、激しく心を揺さぶられた。
このイタズラは、相当に手が込んでいる。
その事実だけで、もうワクワクが止まらなくなってしまった。

そう、やり方を学んで「あのnoterさん」にイタズラを仕掛けるのだ!
記事を「ウキ」だらけにしてやるっ!

九割方フォローするつもりで、記事があればコメントもするつもりで、「1」をクリックして「ウキの元」にジャンプした。

・・・思っていた以上に、チンパンジーだった。
もちろん、こんな小さな〇の写真では簡単に判断がつかないが、なんとなく、AI生成の画像ではない気がした。

記事は一つだけ。
「うきうきウッキー!」
というタイトルの、浮かれた(イカれた?)内容の記事だった。

子供の頃にジャングルで密猟者に捕まり、そこから石油王のペットとして大切に養われていたが、石油王がレースのために大切にしていたラクダを連れ出し、砂漠を股に掛けたチン道中に出発する・・・。

要するに、チン生をエンジョイしている彼(?)の生きざまを面白おかしく記事にしたものだった。

ところどころに「ウキ」が使われ、たまに「ウッキー」や「ムキキ」も出てくる軽妙な語り口は、独特のリズムとテンポを持って私の「魂」に直接的に語りかけてくるようで、一気に最後まで読めそうな気がした。

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

・・・どこからか、音楽が聞こえてくる。
これは・・・


私はスマホをタップして、アラームを止めた。
ランダム再生される今日の曲は、クラシックジャングルの名曲中の名曲だった。

「え~! 夢でしたか~~~っ!?」

記事では、イギリスの動物園で飼育員との甘い恋に落ちた彼が、クリスマスの夜に檻を抜け出すための作戦を実行しようとしているところだった。

せめてあの作戦計画が成功したのかどうかだけは、読み切りたかった。
続きが気になって、どうにも落ち着かない・・・。

そう、どうにも、落ち着かない・・・。



オチ、つかない・・・。




「チンパンジーさんがあなたの記事にウキしました。」
了。


<解説>
昨晩見た夢を、そのまま再現しました。
なので、こちらの作品は「ノンフィクション」です。

ノンフィクションなので、うまいオチが付かないのは、仕方がないのです。


・・・すみませんでした。
二日続けて、やらかしたかも知れません。

夢の内容と、20,000曲中に3曲しか入ってない「クラシックジャングル」がチョイスされたという事実に、またもや運命を感じてしまった私は、反対の意見を押し切り投稿に踏み切ったのでした。



ちなみにバナナは「甘熟王」が好きです。

バナナに目もくれず、次作の構想を練るチンパンジー氏






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