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浦島太郎もびっくり(最終回)



「私のご主人様は、貴方では無く、レイ様でした。
御用件も既にお聞きしております。私の背中にお乗り下さい。
背中に乗って頂ければ、私の胎内に入る事が出来ます。」

と、意味が判らないと想ってはいたが、私は指示通りにその言葉に従った。
すると、不思議な事に吸い込まれるように、鳳凰の胎内の中に、
入って行った。

「それでは、ご主人様、出発します。・・・訂正します。
ご主人様はレイ様でした。
今からレイ様の所にお連れします。」

レイ様の所へ連れて行くだと!
また、私はレイの元へ行くのか❓❗️

と、驚きと不安を抱えながら、僕は鳳凰の胎内にいたが、
先程の酒が残っているのか、僕は寝てしまった。

「着きましたよ。いつまで寝てるのですか?
こんなお客様、初めてです。皆さん、私の運転では不安に思うのか、寝る人などいませんよ。地球の人って度胸がいいですね。」
と、褒められたのか、貶されたのか、判らない事を言ってきた。
ただ、聞き捨てのならない言葉を発してきたので尋ねみた。

「みんな、不安に思うって言ったけど、どう言うことですか?」
鳳凰はその質問に少しビックリしたのか、この様に言った。

「私の口からは言えませんが、時々事故をしてしまうのです。
この鳳凰の乗り物はスピードは出るのですが、安全性が低いのです。だから、事故が多いのです。今日、上手く飛べました。」
私の口からは言えないと言いながら、本心を語ってくれた。
「あの〜。事故に遭ったらどうなりますか?」
と、僕は遠慮がちに、不安いっぱいで聞いてみた。

「もちろん、死んでしまいますよ。当然、私も死にますが、私の場合は、不死鳥なので、蘇りますよ。死ぬのはお客様だけです」
と、平然と、何も悪びれる様子も無く答えるその生き物に
私は、恐れを抱いた。

「あそこにレイ様がいます。」と、生き物は、翼で指差す様に伝てくれた。
翼の方向を見ると、チャペルが見える。
レイと結婚する時に、あの教会でしようと約束した場所である。



何故、その教会にレイが来ているのか解らなかったが、
僕は、その教会に向かって走って行った。

だが、私が教会の前には多くの人達が、
祝福をするかの様に集まっていた。
………何、結婚式でもやってるの?……と想っていた所に
教会の扉が開けられた。

扉が開いて出てきたレイは、偽りの花嫁だった。
頬をこわばらせ、僕の方向をチラッと見た。

これは、レイの結婚式か!
レイは、他の男と結婚するのか?!
と、想った時に、またもや、大粒の涙が溢れ出した。

泣きながらレイのところに向かって行った。
花吹雪舞う道で途中で、転げてしまったが、僕は転げながらも歩き続けた。
そして、やっとの想いでレイの側に行った。

「レイ!」と、大声で叫んだ。
だが、レイは・・・・・・



何も表情を変える事も無く、レイは、僕に聞いてきた

「貴方はどちら様ですか?初めてお会いするのですが!」
と。
レイの記憶は消されていたのだ!



僕は、これからどうすれば良いのか?

僕は、本当の玉手箱が欲しくなった。
記憶を取り戻す玉手箱では無く、いっぺんに歳を取る本物の玉手箱が、・・・・


記憶を消されていたレイを、真之介は不憫に想っていた。しかし、レイの記憶が戻る事は、それ以上に彼女を苦しめることだと、
真之介は想った。
ここは潔く身を引く事である。しかし、地球に戻る為の乗り物が無い。あの鳳凰の様な生き物の契約は一回だけと聞いている。
また、地球に戻っても時が過ぎていて、見知らぬ人達ばかりであろう。

真之介は途方に暮れていた。

その時である。聴き慣れた声が聞こえてきた。

「そこにいるのは、真之介さんでは無いですか?此処に居ると言う事は、記憶が戻って帰ってきたのですね!」

真之介は、声の方向に顔を向けた。
そこには皇后の美しい顔があった。
皇后は、笑みを浮かべて真之介を観ている。
真之介は皇后に近づき、
「私は、地球に帰ったのですが、レイさんから貰った箱の蓋を開けてしまいました。開けてはいけないと言われていたのですが、開けたいと言う誘惑に負けてしまいました。
私の記憶は蘇り此処にやってきました。皇后様、私はどうしたら良いのでしょうか?」


私の質問に、皇后はこの様に応えた。
「あなたとレイは結ばれる事は、不可能です。でも、もう一度貴方の記憶を消し去り貴方が此処で暮らす事は可能です。」
その言葉は、真之介には疑問に感じた。

「では、何故最初から記憶を消してこの星に、置いて下さらないのですか?何故、地球に返してから記憶を消したのですか?
何故その様な手間のかかる事をしたのですか?」

皇后は真之介の瞳を見つめ冷静に答えた。

「貴方は地球人です。地球に帰すのは当然の事です。また、此処にいた記憶を持って地球にいたならば、貴方を悲しませる事になります。
だから記憶を消しました。記憶を蘇らせる物質を何故箱の中に入れたのかは、私は判りません。レイが勝手にやってしまったのです。
レイの貴方に対する想いがその様な行動をとったのでしょう。
貴方がレイの元に帰ってくると、レイは信じていたのでしょう。
だから、私はレイの貴方への記憶を消しました。貴方が此処に居ると言う事は、レイの思い通りになったと言うことです」



「でも、レイさんは、他の人と結婚したのですね。私の記憶を消されて。」
と、私はやるせない気持ちでいっぱいだった。
レイさんはそれほどまで、私の事を想っていてくれたのに、その記憶が消されている。

「レイの記憶を消すのは仕方の無い事です。貴方の事を想って結婚する事は、アンドレにも失礼な事です。」

「アンドレとレイは結婚するのですか?あの臆病者のアンドレと!」
と、私は想わず大きな声を出してしまった
それと同時に、残念な想いが駆け巡った。

「アンドレは臆病者ではありません。最後までペスタと戦いました。立派な人です。」
と、皇后はアンドレの事を褒めているが、私にはアンドレは、臆病者としか見え無い。

皇后は
「この星は、地球に比べて文明は遥かに進んでいます。でも武器の進化は全く無い。この事はこの星の誇れる文化なのです。
私達は、地球人を観察しました。
地球人は絶えず戦いを起こし、武器を進化させた。多くの人達を殺す武器を手に入れた。馬鹿げた事です。
武器の進化が文明の進歩。地球人はこの様な人達です。人を殺す為に武器を進化させる、本当に愚かで悲しい事です。
地球人は、人を殺す為に勇気を持し、それを出来ない人を臆病者と罵り人を殺させた。
人と人との争いが無ければ、その様な人を殺す勇気など必要は有りません。」

と、私を諭すかの様に話してはいるが、強い言葉でもあった。
地球人の愚かな行為を指摘され、人と人の争いを肯定している地球人に、私は恥じた。

「この星の人達は素晴らしい人達ですね。争い事が全く無いのだから。」
と、私は素直な気持ちで皇后に伝えた。

「皇后様、私はこの星で暮らす事は出来ないでしょうか?今更地球に帰ったとしても、あのような時代では私の住み場所が無いです」
と、私は皇后に、この星に住む事を懇願した。

「良いですよ。貴方は国王の側近で国王を守ってください。またペスタの様な人物が突然変異で現れるかも知れません。
その時の為の護衛です。でも、レイの記憶だけは、消させてもらいます。それでもいいので有れば、この星に残っても良いです。」

私からレイの記憶を消されてしまう。でもそれは仕方の無い事でもある。
悲しい記憶は消し去り、新たな気持ちでレイに接していけばいい。
私は、皇后の言葉に従って、レイの記憶を消した。
あの、飲み物を飲んで。

              完

         
     







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