元気の出ないドリンク剤(1)ユニシロシリーズ(1分で読める小説)
僕の名前は鈴木一郎。
大リーガーの鈴木一郎と同姓同名。
そして僕はいつも元気溌剌だ。
職場の雰囲気を明るくさせ、
皆んなに元気と勇気を与えているつもりだった。
だが、意外な事実を知らされる。
それは、一昨日の事。
女性達が会話している声が聞こえて来たのだ。
「鈴木君っていつも何であんなに明るいの?
不思議な人だね〜」
「そう、あの人の元気なの見るたび、こっちは
暗くなるの、これって私だけかな?」
「あら、貴女もそうなの?私も元気無くなるの。」
「ああ言うのを、便所の百ワットっていうのよ」
「何それ?」
「無駄な明るさ」
「いやだー〜、でも本当だ!」
と、女子の笑い声が聞こえる。
僕は、ノックアウトされたボクサーの様に
立ち上がる事は出来なかった。
…僕の明るさは皆んなの明るい気持ちを
暗くさせているのか!…
と、思いつつぼんやりと何処に行くとも無く
歩いていた。
「犬も歩けば、ぼんやりする」
という諺があるのだが、
僕もぼんやりと歩いていた。
ぼんやりとした目に飛び込んで来たものは、
珍しい看板。
黒い木目に赤い字で「ユニシロ」
と、書いてある。
字も不気味な感じで何か、オドオドろしい。
店の中を覗いて見ると、背の高い美人の女性が
涼しげな顔で僕を見ている。
僕は、何故か吸い寄せられる様に店に
入ってしまう。