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Photo by
momonotane
ぼくはくま(一分で読める小説)
「僕は熊と言っても、手彫りの人形。
だから、縫いぐるみとは違いお堅い感じがする。
いつも棚の上に置かれるだけ。
縫いぐるみのテリーベアは、いつも抱っこされて
可愛がってもらっている。
『僕も抱っこしてよ!』
と、いつも願っているのだけど、
その想いは届かない。」
「私は熊。テリーベアの縫いぐるみ。
あの手彫りの熊と違って可愛いでしょ。
いつもご主人様に抱かれているのよ。
寝る時も一緒よ。
やはりお人形は縫いぐるみが一番ね。
柔らかくて温もりがあるわ。
あの木彫り熊とは全く違うわ。」
二体のお人形の想いを聞いているのが、
天界に棲む魔物。
「あの小生意気なテリーベアに想い知らせてやるぞ」
ある夜中のこと、怪しげな男がこの家に侵入する。
そう、こいつは泥棒。
部屋の中を物色していると、家人に会う。
家人の女の手には、
テリーベアの縫いぐるみ。
勇敢にも殴ってくるが、縫いぐるみでは痛くも無い。
直ぐに女を取り押さえる泥棒。
だが、泥棒の頭に強烈な一撃。
家人の男が殴った。
男が持っているのは手彫りの熊。
ヒーローになった手彫りの熊。
惨めに床に転がっているテリーベア。