ひと夏の人間離れ [避暑地を求めて](410字の小説)
夏の暑さに負け、私は避暑地を探した
私が探し当てたのは、人里離れた洞窟であった。
中に入ると、うす暗さと冷んやりとした風が私の心をくすぐった。
…人と離れて暮らしたい…
常に懐いていた私には、最高の幸せが訪れた。
振り返ってみると、私の人生は人から指示され
反発する事も無く、従順に暮らしていた。
だが、心の中ではいつも葛藤し不満を抱きながらの
今までの人生だった。
…人とはもう接したくない!…
強い気持ちが私の胸に湧き起こる。
ここで暮らそう。
と、安易に考えてしまう。
洞窟の中は、かなり広く奥に入ってみると
日光も届かない闇の中。
私は急に恐怖に襲われる。
…やばい、引き返そう…
だが、今来た道が解らない。
…どうしよう、帰る事が出来ない、私は此処から出られないのか?…
焦れば焦るほど、道に迷う。
その時、人の声。
「誰だ、俺の寝ぐらを荒らす奴は!」
…誰か居るのか!助かった…
という想いが湧く
「道に迷って出口が解らないのです」
「そうか!・・俺もだ。」