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非情怪談(1分で読める小説)(410字)


夏が来ると私は、怪談話を子供達に聞かせている。
それは現実に起きた話。
地球上で起きた最も怖い話。
怯えながらも聴く子供達。

私は子供達に伝えたかった。
人間の持つ悪性を!
何故、人間は殺し合い、大きな戦争を起こすのか!を。

人間の怖さ。人間の愚かさ。人間の非情さ。
人間こそが本物の妖怪・悪魔。
その妖怪の話を私は毎年、子供達に語る。
私の想いを伝えたい。
だが、その想いは空虚。
幾ら語っても何も残らない。
悔やんでも、悔やみ切れないこの事実。

幸せだった家族を地獄に叩き落としたあの出来事。
私の脳裏に浮かぶのは、ピカッと光った一瞬だけ。
後どの様になったのか?
そう、あれは・・

あの日、落とされた一発の原子爆弾。
一瞬にして、全てを焼き尽くしたあの原爆。
私達家族は、何処にも行くことの出来ない
地縛霊にされてしまった。


8月6日が来る度に、
私は子供達にこの忌まわし
事実を伝えている。
決して歳を取ることも無い子供達に
今年もまた聴かせてしまう非情な怪談話。




#毎週ショートショートnote

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