手加減無用鍋#毎週ショートショートnote
「具材は、高級品ばかりだぞ」
と、自慢気に話すのは僕の上司。
「この肉は松坂牛の上等
この蟹は越前ガニだ
このエビは高級の伊勢エビだ
それに、門司のフグ
トリフあるよ
あん肝もあるし
ホタルイカもフカヒレもあるぞ。」
「この鍋はすき焼きでは無いのですか?
なのに、フグやカニや伊勢エビまで
何でもかんでもありますね。
いったいどんな味付けにするのですか?」
「この鍋は手加減無用なので、味付けも手加減無用です。
全ての具材が絶品ばかりだから、美味しいに決まっているでしょう。」
と、上司の声が弾んでいる。
「確かに一つ一つは絶品なのですが、
味付けが難しいのです。手加減無用では無理です。
お肉はお肉。カニはカニ。エビはエビの味付けで食べた方が美味しですよ。」
と、僕は熱弁したが無視され、上司は全ての具材を入れた鍋に入れ
そしてすき焼きのタレを、手加減無用と存分に入れた。
カニや伊勢エビ、フカヒレにもすき焼きのタレが!
美味しそうに見えるのは松坂牛のお肉だけ。