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kotonomi
月夜の寝ぐせ(ある女の悩み)(420字の小説)#毎週ショートショートnote
彼女には辛い悩みがあった。
その悩みとは過眠症である。
過眠症とは不眠症の反対で、
多くの時間眠ってしまうのだ。
これでは、お勤めが出来ない。
ましてや出番は月一で数が少ないのに
最近では全く出番がないのだ。
何故この様な病に罹ってしまったのか?
日中はまだ目覚めているのだが、夕方になると
自然と眠くなり、気がつくと朝なのだ。
寝落ちというよりも、気絶する様に眠ってしまう。
…こんな事ではいけない。どうにかしないと…
この焦りが、彼女にこの病院を選ばせた理由であった。
この病院は人知れぬ闇の病院。
だが、この病院の医師はあの有名な
ブラックドクターと言われる名医。
金さえ払えば、どんな病気でも治してくれる、
悪名高き男。
ブラックドクターに託す以外、
彼女の助かる道はない。
彼女は切実に訴えた。
「過眠症を治してください。
月夜に寝る癖だけは絶対に治してください」
「何故、月夜にこだわるんかね」
「月夜の寝ぐせがついてしまうと、
変身出来ないからです。
特に満月の日は絶対です。」