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元気の出ないドリンク剤(2)ユニシロシリーズ(1分で読める小説)



「いらっしゃいませ。」
背の高い女性は、全く表情も変えずに
挨拶をしてくれた。
ここの店員みたいだ。

「あの、僕は初めてここに来たのですが、
どの様な物があるのでしょうか?」
と、元気な明るい声で聞いてしまう。
…しまった、この明るさが人を暗くさせてしまう…

「ここは、普通の雑貨店ですが、
どの様な物をお探しですか?」
と、暗い声だ。

…やっぱり、この女性も暗い気持ちになってる…
と、少し後悔した。

「自分の気持ちを暗くさせる物はないでしょうか?」
と、僕は咄嗟の思いつきで言ってしまった。

「気持ちを暗くさせる物ですか・__・」
と、暗い表情の女性店員。
「無いことは無いですよ。」
と、女性店員は店のガラス張りの陳列棚の中から、
一本のドリンク剤を差し出してきた。

「普通の栄養ドリンクは、元気にさせるのですが、
これは元気が無くなるドリンク剤です。
だからと言って、眠くさせる訳ではありません。
普通におとなしくなるだけです」
と、おとなしく話してくる。

「元気の無くなるのドリンク剤ですか?
聞いた事無いですね。
一本幾らですか?」

「一本ですか?一本では売ってはいないのです。
1ダースで2500円です。
これを一本飲めば、元気無く過ごせます。
もっとも、病気では無いので心配しないで下さい。
無駄な力を出さないだけですから。」

「無駄な力を出さない?。そうですか。
私は、『便所の百ワット』と呼ばれた男。
無駄な力を出し過ぎました。
1ダースください」
と、僕は元気が出ないドリンク剤を
1ダース購入した。
明日からこれを飲んで出社しよう。




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