
個別株投資で使われる用語
個別株投資についてご説明する前に、まずは個別株投資でよく使用される基本的な用語について挙げていきます。
個別株投資をする上で絶対に覚えておかなくてはならないというわけではありませんが、頻出する用語なので分からなくなったらその都度調べてもらえればと思います。個別株投資をしていく内に、用語の意味も含めどの用語がどのくらいの数値になるのかといったことも分かるようになっていきますので、まずは軽い気持ちで覗いてみてください。
・ROE(Return On Equity)
ROEとは自己資本(Equity)、つまり企業の持っている借金以外の純粋な資本の金額に対してどれくらいの税引き後純利益(Return)を得られたかを表す指標のことです。
ROEは「伊藤レポート」という経済産業省が主導したプロジェクトで発表されたレポートによると、最低でも8%以上はあることが求められています。またROEは数値が高ければ高いほど良いものと認識しておいてください。
・PER(Price Earnings Ratio)
PERとは日本語に直すと株価収益率のことで、1株当たりの株価(Price)を1株当たりの当期純利益(Earnings)で割ったものになります。目安となる数値は業界にもよりますが大体15倍で、それ以下ならば企業の利益に対して株価が割安、それ以上なら割高とされます。
ただしPERは低ければ良い、高ければ良いというものではありません。PERが低いということは株価が割安であることを意味すると同時に、投資家からの株価上昇の期待が薄いことを意味するからです。逆にPERが高いと投資家からの株価上昇に対する期待が高いとともに、捉えようによっては株価が割高であるとも考えられます。
どの水準までが株価の上昇期待値に対して割安と言えるのか、投資家の判断の見せどころです。
・PBR(Price Book-Value Ratio)
PBRとは日本語で株価純資産倍率と呼ばれます。算出の仕方は1株当たりの株価(Price)を1株当たりの純資産(Book-Value)で割ると出てきます。
PBRは企業の解散価値を示しており、数値が1.0倍以下となると、現時点で仮に企業を解散させた場合の価値よりも時価総額が低い、要するに割安となります。
PER、PBRともに言えることですが、日経平均などのインデックスにも適用される概念です。歴史を紐解けば日経平均株価のPBRが0.81倍を下回ったことはありません。リーマンショックやコロナショックの時にそれぞれ0.81倍、0.82倍まで下がりました。今後記録が更新される可能性はありますが、株価暴落時の底値を測るときに覚えておくと良いでしょう。
・EPS(Earnings Per Share)
一株当たり純利益のことです。企業の出す税引き後当期純利益を発行株式数で割ることで出てきます。一般的にこの数値以上に配当金を出していると、それは利益以上に配当を出していることになるので企業は今まで上げてきた利益など、当期純利益以外の場所から配当金を捻出していることとなり、あまり企業財務上よろしくありません。
・インカムゲインとキャピタルゲイン
インカムゲインは配当金による利益のこと。キャピタルゲインは株式などの売却益による利益のことでいわゆる利ざやのことです。
・ストップ安とストップ高
日本の株式市場では、株価の大きな値動きによって投資家が過剰な不利益を被らないように制限値幅というものを設定しています。
ストップ安とはある銘柄の一日の株価が制限値幅いっぱいまで下がってこれ以上株価が下がらない状態のことです。一方ストップ高はその逆で、ある銘柄の一日の株価が制限値幅いっぱいまで上がってこれ以上株価が上がらないことを言います。
値幅については下の表をご参照ください

・配当利回り
1株当たり配当金額を株価で割ることによって算出できます。算出結果はパーセンテージで表されます。一般的には配当利回り4%以上が高配当と呼ばれる水準です。
・売上高と営業利益
売上高は企業の営業活動によって得た会計制度上の売上のことです。ここには保有株式による配当金や企業の株式を保有することでその企業の利益を取り込む持分法利益は含まれません。
営業利益は売上高から、その売上を手に入れるためにかかった費用を引いた数値のことです。費用の内訳は原材料などの売上原価、従業員の人件費、旅費交通費やオフィス賃貸料、減価償却費などの販売管理費が存在します。
・時価総額
株価×発行済み株式数で算出されるもので、簡単に言えば企業そのものの価値です。たとえ話ですが、トヨタ自動車の時価総額は約47兆円(2025年2月現在)なので、47兆円を出せばトヨタ自動車という会社を買えることになります。
・自己資本比率
企業が保有する資産に対して企業自身のお金がどれだけ入っているかを比率として出したものです。貸借対照表に記載されている純資産を資産で割ることでパーセンテージで算出できます。業界にもよりますが30~40%以上は欲しいところです。
ただし企業にもよりますが不動産業のように借入金を物件の購入資金にしている業界はその借入金の分だけ資産額(負債額)が大きくなる、つまり分母が大きくなるので自己資本比率は低く出る傾向にあります。同じように金融業のように顧客から資金を預かっている場合も資産額(負債額)が増えるので、自己資本比率は低く出ます。
・営業キャッシュフロー
キャッシュフローとはお金の流れのことで、営業キャッシュフローとは営業活動によって得た現金のことです。この数値がプラスならば財務上健全な営業活動が行われている、きちんと利益を出せていて、かつお金が入ってきている企業ということになります。逆にマイナスだと企業の営業活動によってきちんと稼げていない可能性があります。
・投資キャッシュフロー
企業活動に使う機械や車両といった設備投資などのお金の流れです。この数値がマイナスだと将来の利益向上などを目的に設備投資や研究費にお金を使っていることになります。逆にプラスだと、すでにある設備を老朽化などによる事情で売却したため、それを売った資金が入っている可能性があります。
・財務キャッシュフロー
銀行からの借入や株式の発行などによる財務活動に関するお金の流れです。この数値がプラスということは借入や株式発行によって資金を調達したことを意味します。逆にマイナスの場合は借入金の返済などが行われていることを示します。財務キャッシュフローがプラスなのは必ずしも悪いことではありませんが、それが将来の利益を増やすための資金調達なのか、それとも経営が危なくて運転資金を調達しているのかは注意する必要があります。
・フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローとは自由に使えるお金という意味です。営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの数値を足すことによって算出されます。一般的にはプラスであることが望ましいとされていますが、成長段階にある企業は営業キャッシュフローのプラスの数値よりも投資キャッシュフローのマイナス値が多いことがあり、結果としてフリーキャッシュフローもマイナスとなる場合があります。
以上が個別株投資を行う上で頻出する用語となります。ここに上がっていない用語も出てくる場合がありますが、基本的にはこれらの用語を押さえておけば特に不便はしないはずです。
これらの用語は配当株投資を行うにしろ、売買目的で個別株投資を行うにしろ出てくる用語なので、最初に述べたように無理して頭に叩き込む必要はありませんが、分からなくなったら直々見直すようにしてください。そのうち覚えているはずです。
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