
投資信託ではじめる不労所得(FIRE)計画
ここでは人気の投資信託である「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」を用いて将来の不労所得を得る方法を書いていこうと思います。
ここで言う不労所得とは単に毎月1万円入ったとか毎年5万円入ったとかのレベルのものを想定していません。狙っているのはFIREです。
達成するには時間がかかりますが、数々の書籍を読んだ経験や実体験から、これが一番確実性の高い方法だと考えております。
ではそもそもFIREとは何か。
FIREとは「Financial Independence , Retire Early」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「経済的自立と早期退職」になります。
要するに働かないで暮らしていくという夢のような生活のことですね。
このFIREという概念は米国のトリニティ大学の論文によるもので、「1年間の生活費の25倍の資産」を保有できれば、それを投資で運用することで毎年「資産の4%を取り崩して」その金額内で生活すれば、30年後も資産が0円にならない可能性が98%存在するというものです。
この方法は米国のトリニティ大学で提唱されたトリニティ・スタディとして知られる方法ではありません。よって元本を増やしていき、資産の4%を取り崩しつづけていけば生活を続けられるということを提唱するわけではありません。この方法では資産額が市場価格に影響を受けるので安定せず、そのせいでお金に関するストレスを抱えながら生活をすることになるので精神衛生上も良くありません。よって著者はこの方法をおすすめしません。
ではどのように不労所得を得ていくのか。実際に見ていきましょう。
1.元本を用意する
当たり前ですが先立つものがなければ資産運用はできません。資産運用は掛け算で増えていくものですが、ゼロに何をかけてもゼロです。そのため資産運用をはじめるために必要な元本を用意する必要があります。
ではどのように元本を用意するべきか。これについては以前書いた記事に詳細を譲りますが、著者の場合は安田善次郎(安田財閥創設者。「現みずほフィナンシャルグループ」や「現SOMPOホールディングス」「東京建物」などの企業の大本を創設した人物)に習って新入社員の時から給与の20%を毎月貯蓄に回していました。
著者の場合は給与所得しかなかったのでそこから天引き貯金を行いましたが、FIRE関連の書籍の中には副業や転職で資産を増やすことを勧めているものが多くあります。30代序盤でFIREを達成したことで有名な三菱サラリーマン氏は給与が1千万円以上あったようなのでそのような方には副業は必要ないと思いますが、資産を増やすためにブログやせどり、クラウドワークスなどの副業や、より高い給与を求めての転職を行うことも選択肢に入れて良いと思います。
2.投資信託(「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」)に毎月投資する
資産が貯まったらそれをすべて「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」に投資します。できればNISAを用いて将来的には1,800万円を運用し、余力があれば特定口座でも運用をしたいところです。
以下の表は別の記事でも出しましたが、NISAを利用した場合の資産の増加スピードに関するシミュレーション結果です。拠出金額に応じて3パターンのシミュレーションを用意しています。
①月5万円・年間60万円の投資をした場合
②月10万円・年間120万円の投資をした場合
③月30万円・年間360万円(制度上のMAX)の投資をした場合
全世界株式投資信託の金額シミュレーション

働き始めて最初のうちは投資信託に対する入金力が低いので月5万円を拠出するのも難しいかもしれませんが、給与が上がるにつれて徐々に増やしていけばよいでしょう。
余談ですが、伝説の投資家である米国のウォーレン・バフェット氏は妻に宛てた手紙の中で、「私が死んだら資産の90%はS&P500に連動するインデックス・ファンドに、残りの10%は米国債に投資をするように」と書いたことを自身の経営するバークシャー・ハサウェイの株主への手紙の中で公開しています。
またそれと同時にバフェット氏に関してはこんな逸話も残っています。
バフェット氏がAmazonの元CEOジェフ・ベゾス氏から「なぜ、皆あなたのような投資をしないのか」と問われた時に、「ゆっくり金持ちになりたい人はいないよ」と返しました。
本記事では米国一辺倒への投資になることをリストととらえ、全世界株式インデックス・ファンドを投資対象としている点では異なりますが、バフェット氏のようにゆっくりお金持ちを目指す姿勢は同じです。退屈な資産運用になりますが、ゆっくりと長期投資で資産を増やすことが投資の基本なのです。
3.一定額になったら投資信託を解約して安定高配当株を購入する
投資信託への入金を続けて資産を徐々に増やしていき、一定の年数が経って資産が増えたら投資信託を解約して個別株に買い替えます。購入する個別株の対象は毎年減配せずに安定して配当を出し続けてくれる、利回りが4~6%台のものです。6%を上限としているのは、単に安定して毎年配当を出す企業でそれ以上の利回りの企業がほとんどないことが理由で、市場環境などによってそれ以上の利回りで安定配当をしてくれる企業があれば、そこに投資して構いません。ここでは仮に4~6%としておきます。
この4~6%の安定高配当株式を20銘柄以上ピックアップして、銘柄の平均利回りが5%になるようにしていきます。
この銘柄数は一部の企業が配当を減らした場合に備えたもので、銘柄数を多く持って分散投資をしておけば一部企業が配当を十分に出さなかったとしても、得られる不労所得への影響が少なくて済みます。一億円を持っている投資家の中には80~100銘柄以上に分散投資をしている方もいらっしゃいますが、そこまですると保有銘柄の平均利回りが低くなり、5%を維持できなくなるので20銘柄を最低数としています。
では20銘柄を揃えて5%の平均配当利回りで配当金を貰う場合、実際には手元にいくら入ってくるのか。これは残念ですが5%丸々入ってくるのはまずありえません。
なぜなら配当金には20.315%(2025年1月現在)の税金がかかってくるからです。
つまり、年利5%の配当利回りの場合は税金分を差し引いて、その約80%である年利4%分が配当として手元に残ることになります。
ただしあなたの配当以外の所得金額の状況によりますが、確定申告をすることで配当金にかかる税金を減らし、還付を受けることができます。よって丸々20%の税金がかかるのではなく、配当金から取られた税金の一部を確定申告によって還付してもらうことで実質税金を減らすことが可能です。
また安定高配当株を、NISA口座を利用して購入すれば、配当金にかかる税金が全額非課税となります。この場合は成長枠を使用するので最大で1,200万円分。よって年額60万円分(1,200万円×5%)の配当金に税金がかからなくなります。
〇毎月の生活費によって用意すべき金額が変わる
ところで今回不労所得を得るために行動する目的は、働かなくても生活できる金額を配当金で得ることでした。ではその金額は具体的にいくらになるのか。これはあなたの生活スタイルによって変わってきます。一人暮らしだったり、あまりお金を使わない場合は月15万円の生活費でも間に合うでしょう。一方家族がいる場合は月25~30万円は必要になるでしょうし、贅沢な暮らしをすればその分必要な金額は増えていきます。
生活スタイルによって必要な資金額が増えていくわけですが、ここでそれぞれの月額生活費から見て必要な元本金額を算出してみましょう。この元本金額が投資信託の運用で用意しなければならない金額です。
なお、税引き前平均利回り5%、税引き後に手元に残るお金として実質利回り4%で計算しています。
・月額生活費15万円の場合
必要金額4,500万円(15万円×12か月÷4%)
・月額生活費20万円の場合
必要金額6,000万円(20万円×12か月÷4%)
・月額生活費25万円の場合
必要金額7,500万円(25万円×12か月÷4%)
・月額生活費30万円の場合
必要金額9,000万円(30万円×12か月÷4%)
以上の結果となります。
一番安い月額生活費15万円の場合は元本が4,500万円なので、上に挙げた全世界株式インデックス・ファンドのシミュレーション表では、月5万円投資で26年、月10万円投資で20年かかります。
また一番高い月額生活費30万円の場合は元本が9,000万円なので、上に挙げた全世界株式インデックス・ファンドのシミュレーション表では、月10万円投資で29年、月30万円投資で25年かかります。
この結果を受けて残念に思う方がいるかもしれません。しかし25歳から月5万円の投資信託資産運用を始めた場合は約50歳で一人暮らしならば生きていけるだけの生活費を得ることができます。
また必ずしも配当金だけで暮らす必要はなく、サイドFIREといって配当金を得ながら好きな仕事(バイトやフリーランスなど)をしながら生活するということも可能です。その場合、月15万円の配当金を得ながら残り10~15万円の必要額は週3勤務などで好きなことをして働いて稼ぐといった生活スタイルを取ることができます。
結局投資信託への入金力によって配当金だけで暮らせるかが変わってきてしまいますが、それでも積み立てることでFIREもしくはサイドFIREという形で将来自分の生活スタイルを決めることができます。選択肢を得るということで資産運用を考えてみていただければと思います。
尚、今回はNISAの上限である1,800万円を上限に将来得られる金額をシミュレーションしましたが、非課税でなくても良いなら特定口座として1,800万円以上を投資信託に投入することもできます。その場合は将来得られる額ももっと増えていきます。
とはいえ月30万円をNISAに入れることも一般の人にとっては十分困難なはずです。現実的なプランとしては高給を得られる仕事に就くか副業を行い、節約をして投資信託にお金を回し、一定額に達しても無駄遣いをせずに暮らすというのがFIREの方法でしょう。もしくは自由に働けるサイドFIREを狙うことをおすすめします。
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