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大学研究の実用化について

本日の日経新聞の記事にこんなものがありました。


日本経済新聞2024年3月3日朝刊より引用

世界大学ランキングで見るとトップ勢は欧米の大学で占められていますが、日本の大学の持つ研究力は、大学のその先にある企業の製品シェアを見ても決して欧米勢に劣るものではないと考えています。

実際にこの記事でも、大学による特許数は米国に負けはしていますが2倍の差は開いていません。


つい昨日、「日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか」と言う本を読了したのですが、その中で、現在製鉄業が行っている水素還元製鉄の実用化のための試験炉を作るという話がありました。日本では設備がないためまずは試験炉の設計から始めなければならなかったのです。

そこで話に出てきたのが、スウェーデンの鉄鋼大手SSABが試験炉を持っているということ。日本製鉄の社員はSSABに「ここで水素還元製鉄の試験をさせてほしい」と頼み込みます。

するとSSABの社員から思いもよらぬ返事が返ってきます。「この試験炉は東京大学にあったものをモデルにしている。むしろあなた方のほうが私たちの先生だ」。

日本では安全管理の問題や資金難で廃止された技術がスウェーデンで実用化されていたのです。


日本にはこのほかにも優れた技術がたくさんあります。「インベスターZ」という漫画から拾ってきただけでも、Windowsが発売される前に既に作られていた、最先端の性能をもつOSの「トロン」をはじめ、「iPS細胞」「重粒子を用いたがん治療」など、様々存在します。

ただそれを活かす資金がありません。「トロン」の場合は違いますが、「iPS細胞」も「重粒子」も、上に挙げた水素還元製鉄技術も、とにかく資金面での支援が他国と比較して不足しているのです。

また仮に研究のための資金が集まったとしても、研究職というのは派閥争いの場でもあるそうです。ホリエモンの著書「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」に書いてありましたが、ホリエモンが東大在籍時にナノテクノロジーで超最先端の研究を行っていた先輩がいたそうです。しかし彼の研究室は権力争いで弱かったのでしょう。彼の研究室にはまともなパソコンすら存在せず、海賊版の機器を使用していたそうです。ホリエモンと仲の良かった先輩は異口同音にドロドロとした権力闘争の愚痴を言っていたそうです。


最近ではクラウドファンディングが台頭してきて、[academist」のような研究単位で資金支援ができるサイトも出てきましたが、まだメジャーにはなっていないように思えます。


また今回の日経記事では、研究成果が商用化されないことを問題視していました。「起業について相談できる専門家が学内にいない。研究と起業準備の両立が大変だ」との声もありました。

ミドリムシを用いた商品の製造販売を行っている「ユーグレナ」のように、社長自ら大学で研究して起業する例はありますが、理系の研究者が文系の経営分野まで手を出すのは厳しいというのが実際のところでしょう。


この記事を読んで思ったのは、総合大学内で経営・商学部系統と理系学部を繋げられないかということです。大学の経営学部や商学部では、地域や企業と協業して製品を作り販売するというカリキュラムを行っているゼミも存在しています。それを地域ではなく自分の大学の研究成果を基にして、どのような製品を作り、どのように売るのかを考えてみてはいかがでしょうか。

私が新卒の時に旭化成の企業説明会にお邪魔したのですが、社員の仕事説明で、「開発部で開発した素材が何に使えるか分からないから、何か使い道を探してこい」と上司に言われたという例がありました。実際の企業でもそんなことをやっているのですから、大学でもできないことはないでしょう。
特に起業を扱うゼミなどでは、既に半分完成したような地域製品や企業製品を扱うよりも、何に使うか分からないような技術を実用化させることを考える方がよほど起業の勉強になると思えます。


あるいは大学で難しいなら、起業をしたい人と研究成果を普及させたい人を繋げるプラットフォームを作る。経営や営業の知識を持っている人と、製品技術を持っている人を繋げる場があれば、スタートアップ企業の数も増えていくかもしれません。資金調達はクラウドファンディングを含め、経営畑の人の役目です。


以上は記事を読んで思った私の感想にすぎません。
「じゃあお前がそのプラットフォームやらを作ってみろよ」と言われても、申し訳ないですが現状ではそんな覚悟は私にはありません。

ただ記事を読んで思っただけ。ですが国公立や早慶をはじめとする総合大学ならば、カリキュラムとしてそんなこともできるのではないかと思った次第です。



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