GGEと書いてジジイと読む
突然ですが、ぼくはジジイが好きです。
これだけ伝えてもあらぬ誤解を受けると思うのでもう少し詳しく書きます。正確には、酒で思考回路がクルクルパーになったジジイにどうしようもなく惹かれるという話です。
ぼくは学生の間居酒屋でしかバイト経験がなく、酒を嗜むより前からアルコールで脳をこれでもかとバグらせる大人を沢山見てきました。
バイト先の居酒屋は転々と移ってはいましたがどこの店にも必ず来店するのは「ろくでもない話しかしないアル中ジジイ」の常連であり、揃いも揃って途方も無いアホなんですよ。集団で来るホッピーしか頼まない方々も、耳を傾けて見れば
「孫にやるはずのお年玉パチンコで全部スっちまってよお」「酒飲んで会社行かねえとやってらんねえよお」「昨日離婚してきた」
嫌すぎる。
お年玉は多分死ぬまで恨まれるんだろうなあ、俺だって恨むもん。
ただこのろくでもないジジイ集団は本当に美味そうに酒を飲む、本当に幸せそうにタバコを吸う。本当に楽しそうに「この刺身新鮮でうめえなあ!!!!!」とか言ってる。ついさっき流水解凍した奴なのに。あと、常連であるがゆえにバイトのぼくにもしょっちゅう絡んでくる。すげえ嬉しそうに。なんなんだよその人懐っこさは、ジジイじゃなければ惚れてたよ。
さて色んな終わってる人を見てきましたが、ひときわ記憶に残ってるジジイの話をします。
上述の朗らかなアル中ジジイとはまた違ったタイプでどちらかというと頑固な印象で、ぼくが作った串かつにぬるいとキレたり、空のジョッキを「ん!」と新人バイトに差し出して困惑させたりさせたりしていた。この人はウーロンハイしか飲まないのでそのおかわりの合図だったんですがそんなの新人がわかるわけないだろ。
この頑固モンの何が最高かって、入店時は人殺しのような目つきで席に座るくせに、ある程度酔ってくると途端にフレンドリーになるところです。ポケモンGoがブームになっていた頃にもやっていたらしく「この前ピッピ捕まえてよお、、」とむちゃくちゃ上機嫌で話しかけられ、「あ〜〜なかなかレアじゃないですか〜ぼくコラッタばっかりですよ」と返すと「ハッ、雑魚だな」と言われた。クソむかつく。
あとは、ひたすら提供が終わったメニューを羅列してオーダーしようとしたり、「あんちゃんはコレ(小指をクイっとさせてる)いるのかい?居ないか、はははははははははははは!!」とか勝手に完結して爆笑してました。くそったれ。
この通り酔っ払ったときのうざったさは半端ではないが、ぼくはこのジジイを心の底から憎いと思ったことがないです。
だって終わったメニューの事とか普通覚えてます?そんなの常連であるが故の特技でしょ、嫌いになれないよそんなもの。
程なくしてバイトを辞め、地元を離れて社会人になって1年ちょうど、久しぶりにバイト先の居酒屋に行くと、そこには人手不足で死にそうになっている店長と、あのジジイが変わらず飲んでいたので一緒させてもらいました。
そこで気になったのは串料理が手元に無く、頼んだ形跡もない事でした。毎回串カツ頼んでたのに今日どうしたのか尋ねると、
「お前が辞めてから串カツ一回も頼んでないよ、俺はお前の串しか食わねえ」
とギャルゲーの告白みたいなことを言われて完全に面食らってしまった。そんなのありかよ。
もう記憶も曖昧だけどこんなジジイに告白めいた言葉を言われた事は鮮明に覚えています。
だから俺はジジイが好きだし、ジジイをここまで素直にさせた酒も好きです。
↑この記事の下書きを公開せずキープし続けて1年半、この間ずっと行ってなかったそのバイト先にたまたま行ったところ、本当に偶然そのジジイはいました。
んで、めっっっっっっっちゃ串カツ喰ってた。
よくも裏切りやがったなこのジジイ…
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