だがし屋(や)、はじまりました。
もう6月。
梅雨に入る前、ちょうど今くらいの気候、天気が気持ちいい。
夕方、少し日が暮れだす頃は、風と日落ち前の涼しさも相まって、事業所の前を色んな人が通り過ぎる。
お迎え帰りの親子、学校終わりの学生、仕事終わりの人、犬の散歩をしている人。
そんな人たちが、なぜか立ち止まり、色々と買ってしまう、魅惑のお店がはじまった。
それが、だがし屋(や)。
うちによく来ているスタッフの子どもたちの発案で、火曜の16時~17時半、yafa~の駐車場前で、机に駄菓子を広げ、くじまで用意してお客さんを待っている。
1回目は、5月31日に行われた。
学校帰りでへとへとなのか、「嫌やー」「これめっちゃしんどいやん」と弱音を吐いている。
「ちょっとーはよしてー!」「なにしてんのもう」などと言い合いながら、渋々準備をしていく。
『いくらで売んの?』
「まだ決まってない。これから決める」
貼られた値札たちは、なぜか5円刻み。
お釣りめんどくさいんじゃ・・・?という大人の無駄な心配をよそに、丁寧に消費税まで含めた値段設定。
事前に用意してくれていたお釣りには5円がひとつもなかったので、10円玉何枚かを5円に両替。そろそろ始まりそうな予感。
スタンプラリー、オリジナルマスコットにと細かいところまで凝ってあり、自分たちで作ったチラシを一緒に配りに行く。
「なあ、付いてきてくれん?」
『え、僕も仕事あるし。一人で行ったら?』
「いやや。もういいからはよー」
と近くのお店まで。
道中、
「これ、全部ざきさん(ぼく)が言ってな」
『いや、なんでやねん笑。自分らのお店なんやから自分で説明しいや』
「いやや、もうー。足痛いねん」
と脈絡のないことを言って話を逸らす。
いざお店の前につくと、さっきまでの勢いとは裏腹、もじもじ。
『ほら、はよ入るで。時間ないねんから』
と言って、なぜか僕だけお店に入り、貼ってもらえないかのお願いと、だがし屋(や)の説明を一通りする。すらすら、と。
ぼくも基本、営業職などは未来永劫することがないであろうなほどには人見知りでアガリ症なのだけど、こういうときはぐいぐいいけてしまう。
いったい、どんな力が働いているのだろう。
子どもの前では情けない姿は見せたくないという、見栄なのかもしれない。
根っこは、ぼくも一緒に行った子も、同じだ。
少しばかり、こういうときにはこうしたらいい、というやり方を知っている、というだけである。
無事にチラシを配り終え、店の前に戻る。
ふたりでスツールにちょこんと座り、談笑している。
『ほら、それやと売れへんで。挨拶せな』
「あいさつ?なんて?」
『んー。こんにちはーとか。だがし売ってまーすって笑』
「嫌や―。恥ずかしい」
と言いながら、渋々道行く人に声をかけていた。
すると、すぐに大学生4人組が立ち止まる。
なぜだかこっちも嬉しくなり、記念に写真を1枚。
いい景色。
会議が始まり、横目で見ていると、あっという間に人は集まり、どんどん売れてゆく。色んな人が買っていく。
日が落ちていく時間とともに、その町の、様々な人が立ち止まり駄菓子を買っていくその光景に、懐かしい音がした。
ぼくの子ども時代、そのもっと前からある、色んな人の中の記憶と経験が今ここで溢れだし、未来へと繋がっていく予感がする、そんな音。
「めっちゃ不安やったけどー、買ってもらったときめっちゃ嬉しかった」
と話すその姿は、とてもキラキラしていた。
ということで、毎週火曜の夕方、yafa~の駐車場前で、だがし屋(や)やってます。
よければ、買いに来てください。子どもたちが喜びます。
BRAH=art. 山﨑