
台湾で働く&学生さんにもおすすめ! 台湾の中国語に特化した文字起こしアプリ「雅婷逐字稿 YaTing Transcription」
こんにちは。
今日は台湾で働いている方、出張でいらっしゃることのある方、そして学生さんにおすすめの、台湾の中国語に特化した文字起こしアプリ「雅婷逐字稿 YaTing Transcription」についてご紹介してみます。
会議の議事録や授業のメモなどに役立つかも?
中国語で行われた会議の議事録や、台湾の取引先との商談の際の記録を残したい時、台湾の学校授業の内容を聞き取るのが大変、なんていう時にも使えるのではないかなと思っています(※もちろん録音は事前に相手の許可を取る必要があり、無断での録音は違法行為になりますので、そこはご自身で行ってくださいね)。
私はライターとして活動していますので、取材に臨む際、忘れてはならない持ち物のひとつがICレコーダーです。
取材から原稿執筆、掲載までの流れとしては、
①相手に使用目的を伝え、許可を取ってから録音を開始
②取材後にその録音データを文字起こし
③文字起こした取材の内容を見ながら原稿の構成を組み立てる
④原稿執筆
⑤編集部や取材先への確認
⑥掲載
という形になるわけで、実は原稿執筆だけでなく、⑤の際にも「言った/言わない」や「文脈の確認」などにこの録音内容が役立ったりするわけで、文字起こしは欠かせない作業になるのですが、日本語だとたくさんの文字起こしアプリがあるのに対し、台湾で使われている中国語「台湾華語」は、精度の高いサービスが少ないように感じていました。
一口に「中国語」や「北京語」といっても、台湾で使われている中国語「台湾華語」は、中国大陸のものとは語彙などの言い回しや発音などが大きく異なり、中国大陸のものを使うことができません(守秘義務のある内容も多いので、中国大陸のものを使うわけにはいかないという理由もあります)。
それがここ数年でどんどん使いやすくなってきた文字起こしアプリがありますので、今日はそのアプリについてご紹介してみたいと思います。
会議や取材に大活躍! AI書き起こしアプリ「雅婷逐字稿」
アプリの名前は「雅婷逐字稿 YaTing Transcription」。
後述しますが、「雅婷」はこのアプリのお手本となっている即時記録者さんのお名前、「逐字稿」とは台湾で使われている中国語「台湾華語」で「Transcription(トランスクリプション)」のこと、日本語だと「文字起こし」「議事録」などという意味です。
対応言語
台湾で使われている中国語「台湾華語」(台湾語混じりでも使えるそうです)
英語
日本語
広東語
対応端末
ブラウザでログインして使用することもできるのと、Chromeにプラグインもあります。

主な使い方
1.現場で録音しながら同時に文字起こしできる

現場で「雅婷逐字稿」のアプリを使ってそのまま録音と文字起こしを同時に行うこともできます。
この機能は無料です。
台湾メディアの記者やレポーターさんたちはよくこのアプリをマイク代わりに取材対象者に向けて記録しています。
2.録音データから文字起こしする(最初の20分だけ無料でそれ以上は課金が必要)
ICレコーダーなどで録音したデータをアップロードして、そこから書き起こすことも可能です。
1アカウントあたり、20分で無料お試しが可能です。
それ以上の時間の文字起こしが必要な場合は、必要な時間に合わせて購入することができます。
私はいつもこのパターンで使っています。
MP3、AAC、WAV、FLAC、YouTubeなどのファイル形式を支援しているそうです。
費用はクレジット決済が可能で、
3時間でNT$270というパックを買いました。

私の場合は自分で文字起こしするよりずっと速いので、かなり頼らせてもらっています。
注意しなければならないのが、このパックには有効期限があるので、期間内に使い切らないともったいないというところでしょうか。
3.文字起こししたデータは共有やエクスポートも可能
これも意外と便利で、Googleドキュメントなどにエクスポートも可能です。

台湾発の文字起こしアプリを使いたい
台湾で使われている中国語「台湾華語」の文字起こしができるアプリは優秀なものがまだまだ少ないのと、そもそも私の場合は職業的にも文字起こしアプリは武器として精度の高さのほかに、セキュリティもしっかりしたものを選びたい(音声データをアップロードする時に、中国大陸のものは使いたくない)ので、台湾産のものを選びたいというニーズがあり、こちらを使っています。

開発元がすごいんです
「雅婷逐字稿 YaTing Transcription」の開発元は、「台灣人工智慧實驗室 Taiwan AI Labs」という非営利団体です。
そしてその「Taiwan AI Labs」を設立した人物こそ、1995年、彼が台湾大学二年生の頃には台湾最大のインターネット掲示板「PTT(通称:台湾版2ちゃんねる)」を立ち上げ、台湾では「PTTの父」と呼ばれ、尊敬されている人物です。
杜奕瑾(Ethan Tu)氏
https://www.linkedin.com/in/ethan-tu-8548273/

マイクロソフトでbingの開発やビッグデータ関連に携わったのち、2012年よりAI部門に入り、アジア地区の主席研究開発ディレクター(亞太區首席研發總監/Principle DevelopmentManager)。マイクロソフトによって開発されたAIアシスタント「Cortana」の研究開発責任者を務めたことから「Cortanaの父」と呼ばれる。2017年3月に台湾に帰国し、「Taiwan AI Labs」を設立。
台湾はもう過去何年間もの間、「AI立国」を国策に据えており、「Taiwan AI Labs」はその中心的な立場を担う存在として期待されています。
ちなみに杜さんとオードリーさんが旧知の仲なのは言うまでもありません。
「最も台湾の発音を理解した」AI音声認識を開発中
杜さん率いる「Taiwan AI Labs」が取り組むのは、文字起こしアプリだけではありません。
すでに彼らのAI音声認識技術「雅婷智慧 Yating」は、台湾各地で導入されているようです。
・国家両庁院(台北)、衛武営芸術文化センター(高雄)
アート領域の単語データベースを活用し、パフォーマンス前のリアルタイム字幕や国際芸術交流などに利用されている。
・台北地方検察所
検察官、弁護士、被告それぞれの言葉をリアルタイムで文字起こしし、書記官の業務負荷を軽減。
情報の機密性の高さを考慮し、検察署内のシステムで音声認識を完了できるようにセットされている。
・国家通信伝播委員会
AI音声認識技術「雅婷智慧 Yating」は、台湾の発音に特化した技術であるうえに、ノイズキャンセリング処理も行われているため、ニュース等の報道や街頭インタビューの内容を文字起こしする用途に採用された。
・法務部
法務部及び関連機関のシステムにも採用され、迅速な会議記録や、映像など音声の証拠を文字起こしするような目的で使用されている。検察官も全ての資料を聴き終わらずとも、迅速に手がかりを見つけるのに役立っている。
サービスサイトより一部抜粋して拙訳
などなど、この領域とても奥深く面白そうですが、アプリのバックグラウンドにこうしたAI音声認識の開発が行われていることを考えると、今後も含めこれからの文字起こしアプリ「雅婷逐字稿 YaTing Transcription」が楽しみです。
「雅婷」について補足
と、ここまで色々とAIを活用した音声認識技術について書いてきたのですが、そろそろ「雅婷」というのはどういう意味?と思われた方もいるかもしれません。
詳細はぜひ拙著『オードリー・タンの思考』をお読みいただけたら嬉しいのですが、この「雅婷」とは、オードリーさんお抱えの即時記録者の女性のお名前です。

行政院内のオードリーのオフィスでインタビューする際は、いつもオードリーと私がソファ席に座り、彼女はその後ろにある大臣席に座って議事録を取っていた。巷で「ITの神」讃えられるオードリーが、「彼女のタイピングは私より速い」屈託なく笑う。薛雅婷は台湾に5人しかいないフリーランスの即時記録者の一人だ。
オードリーは話すのが非常に速く、通常1分間におよそ250~300文字を話すのに対し、彼女はさらにそれを上回り、1分間に300〜360字をタイピングするという。台湾では彼女に敬意を表して彼女の名前を取ったAIによるテープ起こしアプリ「雅婷逐字稿」が登場したほどだ。現在、薛雅婷は行政院お抱えの即時記録者に採用され、オードリー以外の会議にも参加している。
ということで、オードリーさんだけでなく、杜さんらAI界隈のエンジニアたちからも広く尊敬されている雅婷さんなのでした。
皆さまの効率化のお役に立てば幸いです!
いいなと思ったら応援しよう!
