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オードリー・タンさんの父方の祖母、ツァイ・ヤーバオさんの自伝翻訳を無料で全文公開していきます

今からちょうど2年ほど前の2021年11月、KADOKAWAさんから『オードリー・タン 母の手記『成長戦争』 自分、そして世界との和解』を出版させていただきました。

この本の原書は今から20年以上前の1997年に台湾で出版されたオードリーさんのお母様の手記で、台湾でベストセラーになった後に絶版になっており、日本からも幾度となく翻訳のオファーが寄せられたものの、実現してこなかったお本です。

そんな大切な家族の物語をお預かりして、日本語で紹介させていただいたという経緯があり(「翻訳ではなく、弥生子の著書として出版すること」という条件をいただきました)、私がこれまで書かせていただいた本の中でもとりわけ思い入れの強い本です。

ただ、この本は今だ重版に至っておらず、自分の力不足を感じていました。

さらにはここ1ヶ月ほどずっとAmazonで紙の本が在庫切れになっており、版元に原因を問い合わせ中でもあります(電子書籍は問題なくご購入いただけます)。

ずっと心の中にくさびが打ち込まれているような感覚があるここ数年ですが、今夏日本に帰国した時にお会いした知人友人たちから「あの本が一番好き」と言っていただけることが何回かあり、その度に救われるような気持ちになりました。

そんな折、東京滞在中に京浜東北線に乗った際、向かいに座っていた女性から「近藤さんですよね?」と話しかけていただきました。

「成長戦争読みました。姉にも勧めました」といった内容のことをお話くださり、足早に、とある駅で降りて行かれました。

日本でそのように話しかけていただくことが初めてだったのに加え、実はちょうどSIMカードの容量を使い果たし、通信ができなくなってアタフタしていたタイミングだったので、あまりしっかりした受け答えができませんでした。

それでも、あの方があの時私に話しかけてくださったことにとても感謝しています。

改めて、オードリーさんご家族からお預かりしたこの物語はとても力があるし、必要にしている方がきっといる、その方に届けるのが私の仕事だと、信じることができました。

オードリー・タンさんの父方の祖母・ツァイ雅寶ヤーバオさんの自伝をボランティアで翻訳します

前置きが長くてすみません。

そんなパワーをいただいたおかげもあって、やっと少しずつ始めようと思っていることがあります。

成長戦争を翻訳するために読んでいた本の中に、オードリー・タンさんの父方の祖母・ツァイ雅寶ヤーバオさんの自伝がありました。

成長戦争同様、この本も目が腫れ上がるほど涙しながら読了しました。

オードリー・タンさんの父方の祖母・ツァイ・ヤーバオさんは、鹿港の名家の出身の本省人です。

日本統治時代に日本語の名前を与えられ、日本の教育を受けていらっしゃいましたが、日本の敗戦で小学四年生から教育を受ける機会を失われたそうです。

その後、18歳で中国大陸から台湾に来た外省人の軍人さん(外省人)と結婚されました。ちょうど二二八事件から数年後というタイミングで、当時は本省人と外省人の関係が最も悪かった時期です。

身ひとつで全く違う眷村という外省人コミュニティに移り、独学で習得した裁縫の技術で軍人さんたちの洋服を修理したり、夫さんと力を合わせ、5人のお子さんたちを育てられました。

この自伝はステレオタイプな教科書などよりずっと、その時代や人々の生き方をありありと教えてくれるし、時代のうねりの中でたくましく生きていく彼女たちの姿に励まされると感じました。

そこで、本作の翻訳をボランティアでさせていただきたいと申し出て、ご本人およびご家族から許可をいただいておりました。

成長戦争のお本の中で宣言していたものの、もう2年も経過してしまいましたが、少しずつ進めていきたいと思っています。

そして、翻訳が終わり次第、五月雨式にはなりますが、少しずつnoteで公開していきます(最後にはひとつのPDFなどにして、無料で公開する予定ですが、きっとまだしばらく時間がかかってしまうでしょう)。

ぜひお楽しみにお待ちいただければ幸いです。

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近藤弥生子 | 台湾在住ノンフィクションライター
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