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日本と台湾、それぞれの宿題について考える編集会議を台北で開催中です(全5回)

今、台湾・台北で、日本と台湾それぞれの宿題について考える編集会議を台北で開催中です(全5回のうち2回が終了、あと3回開催予定です)。

2回の編集会議が終了したので、ちょっとnoteに印象に残った意見や、私の感想などを書いてみようと思います。

主には日本語と台湾華語(台湾で使われている中国語)で進行していますので、もしご興味あればぜひご参加ください。最後に詳細を書きますね。

東京の「SHIBAURA HOUSE」が、台湾・台北で新しいコミュニティスペース「溫室」をスタート

まずは、背景から。

建築家の妹島和世氏が手掛けたことでも知られる、東京都港区・芝浦にある社屋兼コミュニティスペース「SHIBAURA HOUSE」。
台湾との交流を10年ほど続けていらっしゃいましたが、ついにこの11月より台北で新しいコミュニティスペース「溫室」をスタートされました。

「SHIBAURA HOUSE」をご存知でしょうか?

東京都港区・芝浦にある、社屋兼コミュニティスペースです。

会社の創立自体は1952年ですが(旧・広告製版社)、2011年、社屋の建て替えを機に、SHIBAURA HOUSEとしてリニューアル。「芝浦にある、ひとつの家」というコンセプトです。

ここは近所に暮らすこどもたちをはじめ、会社員、そして海外のビジターも集まるオープンなスペースとして運営しています。

また、料理や英会話のクラスから国内外のゲストを招いたレクチャーまで、年間100回をこえる文化的プログラムも実施してきました。

とくに1Fは誰でも無料で出入りができる、公園のような場として開放。ランチタイムには近所の人々で賑わう光景をみることができます。

出典:SHIBAURA HOUSEオフィシャルサイト「ボトムアップで築く、私たちのパブリック
出典:SHIBAURA HOUSEオフィシャルサイト
出典:SHIBAURA HOUSEオフィシャルサイト

オフィシャルサイトには、こんなメッセージも記されています。

妹島さんによる設計空間を見るために、世界中から見学者が訪れます。

以前の社屋では考えられなかったような、非常に多くの人達との出会いが生まれています。

これからの課題は、このSHIBAURA HOUSEという家に集う人々がお互いを知り、理解し、立場を超えた関係性を築いていくことです。
このSHIBAURA HOUSEという素晴らしい空間を活かしながら、より魅力的なコミュニティづくりに貢献していきたいと考えています。

出典:SHIBAURA HOUSEオフィシャルサイト「この場所をつくるまで

妹島さんといえば、西沢立衛りゅうえさんとのユニットSANAAサナーとして設計された「金沢21世紀美術館」が知られていて、私自身も大好きですし、2025年には台湾に美術館と図書館が合わさった「台中綠美圖」という施設がオープン予定。すごく注目されています。

個人的には、私が台湾に移住した2011年、JR日立駅の駅舎や通路が妹島さんによってリニューアルされて、どこにでもある古びたJRの駅舎が、本当に美しい空間になった時のインパクトがすごかったのを今でも覚えています。

それは正直なところ、自分が暮らしている旧態依然な場所に誇りを持てずにいた私の心に「物事は見方次第でどうにでもなるよ」と、灯りを付けてくれたような体験でした。「設計ってこんな力があるのか」と、心が震えました。

私の家は転勤族で、一時期、茨城県日立市で暮らしていたことがあるのですが、妹島さんはお父様が日立製作所の技術者で、幼少期はその社宅で過ごされたり、日立市で育たれた(助川中学校卒業、水戸一高卒業と!)のだそう。

話がそれましたが、「SHIBAURA HOUSE」代表の伊東まさるさんと妹島さんが建築と運営の9年間を振り返られている対談がウェブで無料公開されていますので、そちらもぜひ。

日本と台湾の「HomeWork」について考える、展示と編集会議を開催中

前置きだけで1,500文字になってしまいました(汗)。

あちこちで、周囲のみんなから「(SHIBAURA HOUSE代表の)まさるさんを紹介したい」と言われ、私が東洋経済オンラインで“次のオードリー・タン"として紹介したJustin(游適任)さんが食事会をセッティングしてくださって、勝さんと知り合いました。

「溫室」があるのは、Justinさんたちが運営する不動産「Alife」のフリースペース。そこでは、今後、数ヶ月ごとのスパンで決められたトピックに基づいたフィールドワークや展示、イベントなどが開催されていくそうです。

写真中央がSHIBAURA HOUSE代表の勝さん、その左隣がJustin(游適任)さん、右隣は春池ガラスのT.A. 吳庭安さん。写真提供:溫室 by SHIBAURA HOUSE (Photo by Masato Sata

「溫室」として初となる取り組みで、展示のテーマに選ばれたのが「教育」。

日本と台湾の「HomeWork(宿題だけでなく、広義で家庭学習といった意味合い)」のあり方を考える内容の展示と、5回にわたる編集会議が開催され、その結果をまた展示にして回収していくといった試みです。

日本と台湾の「HomeWork」のあり方を考える内容の展示。
空白部分は編集会議を通して得られたものが掲出されていく予定だそう。
写真提供:溫室 by SHIBAURA HOUSE (Photo by Masato Sata)

1回目の編集会議

写真提供:溫室 by SHIBAURA HOUSE (Photo by Masato Sata)

1回目の編集会議、参加者は全員台湾人。
SHIBAURA HOUSEスタッフのハッチさんと私で進行します。
初回ということで、日本と台湾の宿題それぞれの思い出について参加者にシェアしてもらいました。

印象的だったこと、感想のメモ

・隣のカフェに行こうと思っていたけれど、間違えて入って来られた女性がそのまま参加され、1時間半も編集会議で熱くお話ししてくださったのが台湾らしくて素晴らしかったです。

・参加者の方が経験されてきた台湾の宿題には、「生徒が創意工夫することのできる自由な空間」がほとんどなかったこと。

・日本の宿題に関して、「夏休みの自由研究」や「花丸はなまるの文化」についてすごく褒められました。

花丸はなまるという採点方法は台湾にはないようで、丸付けの方法について話が盛り上がりました。私が、日本の教育学者さんから「あるクラスで先生が花丸をつけると、他のクラスの保護者から『自分の子どもの担任教師は花丸を付けない』というクレームが入り、学校全体で花丸禁止になったというエピソードを聞いたことがある」と話すと、台湾人参加者から「どうして花丸を付けることに統一しないの?」とごもっともな反応がありました。

・好きだった宿題、私は読書感想文が好きだったと伝えると、参加者の方の経験では、台湾では読書感想文を書くにも先生から本を指定される(数冊の中から選べることはあるけれど、それも指定された中からしか選べない)ので、興味がない本しかなかった場合は本当に苦痛だったとの話がありました。

・台湾の宿題は「少數快樂(ハッピーが少数である)」というコピーが参加者から出て、「ハッピーをどうやって増やしていけるか?」という視点も加わりました。

2回目の編集会議

写真提供:溫室 by SHIBAURA HOUSE (Photo by Masato Sata)

2回目の編集会議、参加者は台湾人、2人の中国人留学生(山東省出身)、そして子どもがいた方がいいかなと思って連れて行った我が家の長男=台湾育ちの日本人と、多様性に満ちておりました。

今回も、SHIBAURA HOUSEスタッフのハッチさんと私で進行しながら、日台それぞれの教育制度やその歴史の変遷が宿題に与えた影響などについて話し合いました。

ハッチさんから、日本の宿題は、そもそも夏休みの宿題から始まり、次第に日々も出されるようになったこと。高校や大学入試対策のためにドリルなど反復系の宿題が生まれ、その割合が増えていった話などがシェアされました。

印象的だったこと、感想のメモ

・ハッチさんがご自身の子どもの頃に好きだった宿題は、宿題に対して先生からのフィードバックがあったから好きだったというお話をされていて、それにみんなが共感していました。

・中国からの留学生のお話を聞いていると、日本や台湾よりもだいぶハードだなと思いました。

・印象深かったのが、中国人留学生が教えてくれた「內卷」という造語。
「クラスメイトが10やったなら、自分は15とか20とかやる」などと、常に他人と比べて負けないように多い量をこなしていくうち、どんどん自分がinvolution締め付けられるされていくような現象のことだそう。

・そんな中国人留学生が好きだった課題(または宿題)に、チーム分けされたクラスメイト間でリレー形式でお互いの意見を書きながら作っていって、最後に先生に提出するタイプのものがあったらしく、その話を聞いていると、「競争」より「コラボレーション」「共創」だと思い始める人が多い時代なのだなと感じました。

写真提供:溫室 by SHIBAURA HOUSE (Photo by Masato Sata)

一人ひとりが考える「HomeWork」のあり方

長くなりましたが、皆さんはどのような「HomeWork」のあり方がより良いなと思われますか?

個人的には、AIの時代、ドリルや暗記をやるよりも、ますます街に出て自分自身や社会を探究する方が大事になっていくのではないかなと思っています。

最近は、長男が社会の授業で二二八事件について習ったということで、(「臺北二二八紀念館」が2025年2月までリニューアル工事中のため)景美にある「国家人権博物館」へ行き、二二八事件がきっかけになって始まった台湾の白色テロ時代について知ろうということになりました。

同じく、長男が社会で習った「野柳」にも実際に行ってみました。

同じく、長男が台湾の環境意識を高めた故・齊柏林(チー・ポーリン)監督のことを習った直後には記念館を訪れました。

共働きですし、私は公私の区別のない仕事をしていて休日を一緒に過ごせることも少ないのですが、できるだけ子どもたちと一緒に学ぶ時間を作りたいと思っています。

編集会議はまだまだ続きます! ご興味あればぜひ。

台北での編集会議、まだ残り3回ございます。
日程:12/2、9、16(すべて土曜日)
時間:各回とも 15:30-17:00
場所:「溫室 by SHIBAURA HOUSE」
台北市士林區福林路203號(Alife FLの1F)

お申し込みは下記どちらかからDMにて、日本語もOKです。

Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=61552163537750
Instagram:https://www.instagram.com/onshitsu_by_shibaurahouse/

最後に耳寄り情報👂「SHIBAURA HOUSE」の会員になると、東京と台北でそれぞれコワーキングスペースが使えるようになります

誰にも何も頼まれてもいないのですが、勝手に宣伝です。

東京都港区・芝浦の「SHIBAURA HOUSE」のコワーキングスペースのメンバーになると、(妹島和世さん設計の!)1F/2Fのワーキングスペースを24時間利用可能になったり、カフェでのドリンクのディスカウントがあったりと、とても魅力的なのですが、

さらに

台湾の「Alife」とのパートナーシップ契約を締結されたそうなので、もし台北にワーケーションやご出張などをされる際にはAlifeのオフィスや居住スペースの利用を始め、現地のライフスタイルを楽しむサービスを利用することができるのだそう!(「Alife」はどんどんサービス拡大中なので、詳細は最新情報をご確認ください)

これはかなり良いと思うのです。
実際、友人の台湾人の「Alife」メンバーが「東京に行った時、SHIBAURA HOUSEでワーケーションできたんだよ、最高!」と興奮していました。


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近藤弥生子 | 台湾在住ノンフィクションライター
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