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青本雪平「ペンギン殺人事件」(徳間文庫)

青本雪平「ペンギン殺人事件」(徳間文庫)。第三回大藪春彦新人賞受賞者長篇デビュー作。電子書籍版はこちら↓
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 ある朝、17歳の鳴海柊也が起きたら、自宅にペンギン🐧がいた。調べてみると、それはフンボルトペンギンだった。そして同居していた祖父が失踪していた。しかしペンギンの反応を見ると、実はペンギンは祖父のようだった。そんなパニックの朝、その日から祖父が大家をしている店子の娘である小学校4年生の少女・糸川晴を預かることになっていた。晴はたちまちペンギンと仲良くなった。柊也と晴はどちらも不登校児だったので、2人と1匹は毎日を一緒に過ごした。柊也には、ほのかに好意を寄せる、もう1人の店子である三十路の女性・土田葉月がいた。ある日、柊也は豪雨の中、アパートの庭に穴を掘っていた葉月と遭遇する。穴にスーツケースを埋める葉月を手伝った柊也だが、その中身が何であるかは訊けなかった。
 世にも奇妙な物語だ。フランツ・カフカ「変身」よりずっと変だ。受け入れ難いシュールな現実が淡々と進行する。ペンギンの生態も写実的に描かれている(ところどころ現実のペンギンにはあり得ない行動も見受けられるが)。エンディングから推察するに、登場人物たちがいかに辛い過去を背負ったかが伺える。ハッキリ書いていないから、どの事件が誰のどういう動機か自分には理解できない。それくらい多くの事件が発生したようだ。だからこの作品はミステリーと言えるのかもしれない。しかし読んでいて心に響くのは、登場人物たちの孤独と惹かれ合う絆だ。カタストロフィは、人類の救済の大団円に思える。イエス・キリストは全人類の罪を背負って、磔刑となって死んだ。そして復活して昇天した。そういう意味で不気味なコーダは、実はハートウォーミングでハッピーエンドだったのかもしれない。


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