金曜ロードショー・夏休みスタジオジブリ第3弾「耳をすませば」
金曜ロードショー夏休みスタジオジブリ第三弾は「耳をすませば」。自分が最も号泣したジブリ映画。後半は鼻水が出っ放し。もちろんこの映画も劇場で3回観てから、テレビやビデオで何度も何度も観た。この映画は公開時にたしかチャゲ&飛鳥の名曲に乗った小編「On Your Mark」と二本立てで同時上映された。
https://www.ghibli.jp/works/mimi/
先ず冒頭のシーンにやられた。主人公の月島雫の一言は、飛行船を見て「今日はいいことありそう」。こんなこと、今の自分だったら絶対に言えない。そして仮想京王線の車内から猫ムーンを追う(ここはすっかり忘れていた)。つまり青春って超暇。だからこそ「地球屋」でバロン男爵にも会える。「忙しい、忙しい」なんて言っている奴に、彼に会える権利はないのだ。
劇中劇は井上直久先生の「イバラード」。これは雫が描くファンタジー小説(おそらく雫にはファンタジーという意識すらない)。ここだけモネの絵みたいに別世界。半径50mの世界から異次元の世界に飛び出してゆく。そして仮想聖蹟桜ヶ丘は天空の城。そういう光景が、早逝の天才・近藤喜文監督の見せたかった風景なんだろう。一時期、井上直久先生の画集を復刻しようとしたことがある。しかし残念ながら復刻前に前職場の代表を退任してしまった。思い果せず、くれぐれも残念至極だった。そうそう聖司のお爺さんが雫に見せたラピスラズリの原石。これを見てクロスのラピスラズリの水性ボールペンが欲しくなって、連れ合いが誕生日プレゼントに買ってくれた思い出もある。
この物語は月島雫の物語。恋愛物語のようで、そうではない。誰にもあるコンプレックに向かい合う克服日記。誰しも自分には自信がない。自分が小さく見える。その幼さ、必死さ、いじらしさに涙する。天沢聖司くん、中学生でバイオリン職人目指すなんて、あまりにカッコ良すぎる。雫が背伸びして無理するのもわかる。だからこそ人間って伸びしろが生まれる。夕子の気持ちに鈍感だった杉村だって雫に失恋して、ちょっぴり大人になった。ラストシーンの聖司による絶叫は初めて観た時は恥ずかしくてしょうがなかったが、今観るとあの恥ずかしさがいい。今日知ったエンディングには夕子と杉村のその後もチラリ。
これは私の仮説であるが、きっと外れていないと思う。天沢聖司という名は天沢退二郎先生から取ったに違いない。だって「あまさわせいじ」の7字のうち6字までが同じ。スタジオジブリの映画は基本的にはファンタジー。宮崎駿プロデューサーが天沢退二郎先生の名作「光車よ、回れ!」を読んでいないわけがない。