御嶽海が大関昇進を確実に

大相撲初場所の千秋楽が終了。優勝は御嶽海。眠れる獅子がようやく覚醒。これで優勝は堂々３回目。実力は大関以上で、春場所での大関昇進も確実に。優勝インタビューで臨時理事会招集を聞いて涙ぐんだ光景にはウルっときた。貴景勝、正代、照ノ富士と抜かれ続けてきた大関レースに終止符を打てることになった。照ノ富士は終盤に失速。明生戦で土俵下に落ちた際の膝の状態が心配。阿炎戦以降では猛攻を残せる膝ではなかった。前半戦も勝つには勝っていたが土俵際で凌ぐ危ない相撲が多い。横綱としてドンと受ける相撲は、双葉山のように「後の先」でも相手を上回る速さと低さが立ち合いに必要。それができたのは全盛期の白鵬だけ。二場所連続して優勝争いに絡んだ阿炎の実力は本物のようだ。九州場所よりは下がる相撲が多かったが、実力三役に再生。御嶽海の次の大関候補に名乗りを上げたと言ってもいい。
　大関陣は末期症状。八角理事長が「休場は何回目？」と記者に問うた貴景勝。力なく土俵を割り続けて負け越した正代は自信を失くしているのではないだろうか。伸び盛りで楽しみなのは豊昇龍。技の切れ、激しい闘志、粘り腰の下半身。朝青龍好きの自分としては最も注目している力士。一皮剥けた琴ノ若の初ブレイクも新鮮だった。前半を盛り上げたのは「土俵際の魔術師」千代丸タン。新入幕の若元春と王鵬は明暗。業師では宇良は工夫の土俵が見られたが、炎鵬の相撲には相手に勝ち方を覚えられた限界を感じた。初日から10連敗を喫した千代の国と武将山は、さぞかし辛かったことだろう。めげずに初日を出した11日目に天晴れ。めちゃくちゃ笑顔が可愛い熱海富士が十両昇進を確実にしたことも嬉しい。阿武松部屋では阿武咲が三役陣全てと当たっての二桁勝利で大活躍。贔屓の慶天海は残念ながら三段目の再スタートで負け越し。
　全体を通して、初場所も休場力士が多かったことが残念。幕内十両で全部で11人(内訳はケガ6人、コロナ1人、不祥事3人)。協会はより積極的に安全対策を打って欲しい。力士ではないが、NHK藤井康生アナの定年による実況中継引退も残念。最も印象に残っているのは、2017年九州場所で当時横綱だった白鵬が自らの物言いで土俵を去らなかった時に「これはいけません。こんなことはあってはならないことです。気持ちは分からないではないですが、この姿はもう…大横綱いけません」との絶叫だった。