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小路幸也「からさんの家 まひろの章」

小路幸也「からさんの家 まひろの章」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CGLQNTV6/
 詩人で小説家で画家で、かつては女優だった義祖母・三原伽羅(72歳)。通称「からさん」。とってもカッコいいお祖母ちゃんだ。高校を卒業した神野まひろ(18歳)は、義祖母の家に同居することになった。まひろは複雑な家庭事情を抱えて生きてきた。幼い頃に両親が離婚→父親は交通事故で他界→ 義母の妹(継母)と同居→継母が結婚で北海道に引っ越し→まひろは就職で東京に残る→会社が倒産という経緯。からさんの住む千駄木の洋館に集う5人の個性的な同居者たち。若き芸術家ヤマダタロウ(35歳)、建築家志望の学生・野洲柊也(23歳)、バーを営む歌手の女性・永沢祐子(50歳)。いずれも生い立ちに何かある面々だった。訳ありのまひろを4人は迎え入れる。
 とっても平穏で優しい、ほとんど波風の立たない小説(いや後半にチョビッと立つ)。ここで描きたいのは、きっと新しい家族の形。人生百年時代に、きっとこういう理想像はあっていい。読んでいて高橋留美子「めぞん一刻」を思い出してしまう。しかし響子さんと五代くんのような恋物語は介在しない。モノセックスとかユニセックスということではなくて、家族に男女はあっても、惚れた腫れたは必要ない。そして何より血の繋がらないどうしである。初めて社会に出た主人公・まひろを、いかに心安らかに迎え入れるか。若くまっさらなまひろの長所や才能を見い出し、いかに引き出してゆくか。一方で、いかに社会のルールを覚えてもらうか。大人たちの慈しみが行間に満ち渡る。エンディングは、改めて血の繋がった家族との関係が対比される。そこはまひろの出発点でもあるから。


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