末廣圭「けいちつ」
末廣圭「けいちつ」。電子復刻第91弾。官能ロマン小説なので、今日のお話は女性の方々は読まなくて結構。とは言うものの、この作品は官能小説と言うよりは、青少年の恋と性の目覚めの話であり、それを優しく導き、激しく求める女性たちの聖女物語でもある。読んでいて胸がキュンとするシーンもあり、昭和レトロな時代感と共に、これまでの末廣圭作品とは一線を画するものである。タイトルの「けいちつ」とは、虫たちが這い出す春を指す「啓蟄」。典彦の性の目覚めを啓蟄に例えた「あすなろ物語」である。https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08DNF5N9X/
葛西典彦・69歳。退職後の生活を、都会を離れ、千葉県安房郡鋸南町で送ることにした。男やもめの無聊を慰めるために、行きつけのスナックの久米まゆみ・27歳をかき口説いて連れてきた。炊事や家事だけでなく、夜の営みも含めての同居である。しかし歳と共に衰えてゆく典彦の性生活。まゆみは典彦の過去の性遍歴を質す。昔懐かしむように語られた、典彦を過ぎ去って行った女性たちとの思い出。
両親を早く亡くした典彦は、小学生時代を過ごした東京から、叔父のいる奈良県南葛城郡で中学生時代を過ごした。そこに同居していたお姉さん山内寛子・28歳に恋をする。寛子は、14歳の典彦の好意を受け入れて性の手ほどきをする。ただしセックスは大人になって本当に好きな人とするように釘を刺す。典彦はその後の人生で、寛子のことばに縛られて生きる。横浜の大学に入れた典彦は、苦学生として出版社でアルバイトをしながら学費を得る。そんな典彦は、神田小町と呼ばれた電話交換手の住吉佳代・22歳に憧れる。彼女の看病をきっかけに結婚を誓い合う仲となった二人だが、性生活の稚拙さから添い遂げることは出来なかった。傷ついた典彦を慰め迎え入れたのは、新宿三丁目のトリスバーで働いていたモモちゃんこと上田桃子・28歳。性の快感と喜びを知った典彦だったが、正社員となって大阪支社に転勤。二人きりのオフィスの同僚は
皆川琴乃・30歳の麗しい人妻だった。典彦に好感を持ってくれた琴乃と、二人はオフィスで性交に耽ることとなる。
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