末廣圭「人妻酔い」
末廣圭「人妻酔い」。電子復刻第67弾。官能ロマン小説なので、今日のお話しは、女性の方々は読まなくて結構。父親が急死して、大塚駅から近いコンビニエンスストア「カワハラ・ストア」を継ぐ羽目になった川原順平。35歳にして、33歳の美しい妻・由紀、小学校2年生になる娘の舞がいて、生活は順調そのもの。それでいて、30歳の谷口瑞江という人妻と娘の目を盗んで、人気のないマンションの屋上で浮気に走る。そんな順平に、妻の由紀から紹介された鈴木遥子は、PTA副会長だった。65歳の現会長が市会議員選に出るために辞任し、新任としてPTA会長への就任を迫る。順平の出した交換条件は身体を差し出すことだった。それで断ってもらえると思った順平だったが、鈴木遥子は順平の車で新宿のラブホに向かった。妻と同い年の遥子は、プロポーションも素晴らしく、情感豊かな女性だった。その遥子が順平のところに連れてきたのは、女子大の後輩である27歳の片桐美佐。その相談事は、結婚した45歳の大学助教授の息子との、許されざる関係だった。若く美しい継母と、性への関心が高まる中学三年生。順平は自らの身体で、美佐に生活を出直すことを導く。そして、8年ぶりに順平を訪ねてきた出版社の元同僚である野波絵梨子。美貌の絵梨子は職場の花であったが、半年前に職場結婚したばかり。それなのに3人の男性と浮気して、既に男性経験は19人に及ぶ。逆にそのことで自己嫌悪に陥った絵梨子を、順平は彼女の身も心も洗い流す。
順平に相談に来る女性たちは、いずれも何らかの心の傷やトラブルを抱えている。そんな彼女たちのトラウマに順平は耳を傾け、官能小説なので心だけでなく身体も開かせて、その悩みを解決する。相手はいずれも人妻だから、それぞれが一夜の交わりで、お互いの家族関係を壊すこともない。男性にとって、非常に都合のいい話だが、一方で女性にとっても家庭までをも壊したくはない。妻たちの日常生活における空虚感も描かれている。それは男性たちの直情的な性欲とは全く違った心の空洞である。主人公の順平さえ、妻の由紀が新しい下着を身につけて、男性混じりの会食に出かけてゆく姿を見て気がつく。それは毎日食べる米に例えられた、かけがえのない物でありながら、その必要性を痛切に感じることができなくなった日常への埋没である。
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