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出版業界「正常ルート」の縮小と未来

出版科学研究所から「上半期紙+電子出版市場の推移」の発表があった。それによれば8,024億円で前年同期比3.7%減、電子は2542億円で7.1%増と見出しが付いていた。このタイトルを見て思ったことは『紙の増減は?』だった。記事を読み進めてゆくと、紙の出版物(書籍・雑誌)の推定販売金額は5482億円(同8.0%減)で、2期連続の減少傾向であった。うち書籍は3,284億円(同6.9%減)、雑誌は2197億円(同9.7%減)。つまり出版科学研究所は意図的に紙の市場衰退を、表だったタイトルにはしたくなかったのだなと感じた。もっとも出版科学研究所は公的機関っぽいネーミングだが、実質的にはトーハンの子会社である。紙の本流通の主役である取次の一部として、このような意識が働いているのだろう。
 自分が取次にいた頃は、日販だけで売上8,000億円を達成して「8,000億達成記念」として、8,000円の金一封が配られたこともあった。しかし今や業界(いわゆる正常ルート=出版社→取次→書店)の紙+電子で半期8,000億と隔世の感がある。日販、トーハンで各4割シェアと呼ばれていたので、業界は半分近くに縮小してしまった。特に業界を支えていた雑誌の衰退が大きい。2024年問題を控えて、配送ルートの確保すら危うい。しかし仕方がないことである。電子出版が伸び行き、ネット通販が拡大してゆくのは時の定め。そこでいくら「紙にこだわる」とか「リアルが大事」と言っても、現実は利便性や需要が変わっていっているのだから。今思えば日販、トーハンが電子取次事業を担ってゆけなかったことが(負け犬の遠吠えのようになるが、自分は日販が出資したD社を育て切れなかったし、同じく出資したP社もM &Aしきれなかった)、そこにいた自分も含めて忸怩たる思いである。数字も大事だけれど、数字だけで見ちゃいけないのかな。そのかわりに、小さな書店が加速度的に開業したり、図書館通いの人が増えたり、ネットを舞台にした著者が増えたり、大手出版社にとって変わる新興出版社が勃興したり。活字文化に馴染む人は、むしろ増えているとも聞く。業界が変わってゆく時期なのだろう。そこに思い描く未来が何であるかが大事なのだろう。CCCもポストTSUTAYA、Tポイント消失に何を選ぶか。今見えている成功事例は、本の集客力を用いた地域再開発事業あたりか。


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