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照ノ富士関の大関昇進復帰に思う二つのこと

照ノ富士関の大関再昇進が正式に決まった。膝の大ケガに加えて糖尿病と、自身の内憂外患で序二段まで下がっての大関復帰。陥落の途中で5〜6回は照ノ富士関本人から引退の申し出があったのを、伊勢ケ浜親方の説得で踏み止まったと言う。大関復帰が陥落翌場所以降の二桁勝利でないケースは、1977年の魁傑以来44年ぶりの快挙である。春場所で貴景勝関に勝って優勝した時、そして師匠である伊勢ケ浜親方が照ノ富士関に優勝旗を渡した瞬間は、涙を禁じ得なかった。照ノ富士関の大関復帰に関して、思ったことが二つある。
1️⃣一つは、照ノ富士関は「元の位置に復帰したい」とは言っていたが「横綱に昇進したい」とは、ずっと言ってこなかったこと。もちろん大関復帰が決まってからは「一つ上を目指したい」と発言した。しかしそれまではあくまで「元商店の大関に戻りたい」でしかなかった。幕内復帰で幕尻優勝した翌場所の昨年秋場所では、終盤に膝を痛めて休場。今年の春場所も10日目の志摩海戦で膝を痛めていたと言う。膝に爆弾を抱えている照ノ富士関には、明後日の話は出来なかったのだ。
2️⃣もう一つは伊勢ケ浜部屋のバックアップ。伊勢ケ浜親方による再起説得が最大の功績。元々は照ノ富士関は間垣部屋からの移籍組で、伊勢ケ浜部屋生え抜きでもない力士である。いつも苦虫を噛み潰したような無愛想な顔だが、伊勢ケ浜親方は抱擁力のある方なのだと思った。照ノ富士関は、同じく膝の故障で苦しんだ安美錦こと安治川親方にも何度も相談している。そしてドン底に落ちた照ノ富士関を励まして風呂に一緒に入っている照強関とのツーショットは、その労る気持ちに、見る度に涙してしまう。思えば昨年の7月場所での照ノ富士関の優勝も、照強関の足取り急襲での朝乃山戦勝利が効いている。元付け人の駿馬、呼び出しの照矢との繋がりも限りなく深い。このような濃厚な人間関係があってこそ、照ノ富士関大関復帰のドラマが生まれたのだろう。人は自分一人では何もできない。周囲の支えあってこそ、本人も努力を積めたことを照ノ富士関は実証した。

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