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史上最強の受付

名前は伏せるが近所のクリニックに、喘息発作の治療で通っている。ところがそこがいつも満員御礼の盛況。必ず2時間は待たされる。付近の医院にはない繁盛ぶりだ。推測するに、このクリニックに通う人が多いのには二つ理由がある。
 一つはむやみやたらと薬を出すこと。自分が喘息発作を起こす際は、たいてい風邪を引いて、気管支炎喘息の発作を起こす。そこで風邪と喘息の薬を十数種類の処方箋を出す。解熱剤、抗菌剤、痛み止め、咳止め、気管支炎拡張剤、抗アレルギー剤、抗生物質、去痰剤、ステロイド薬、胃腸薬などなど。発作が出ていない日も「用心のために出しておきましょう」と出す。以前に職場のそばの医院に、喘息発作を起こして行った際に「貴方のかかりつけのクリニックは、なぜ同じ機能の薬をこんなにいっぱい出すのだ?」と仰天して、訝しんでいた。患者は薬をいっぱい出されると、それだけで安心するのだろうか。
 もう一つは史上最強の受付がいること。おそらく50代くらいの、ふくゆかな女性である。いつもエプロンをしてカウンターにいる。この地域に住んで20年、通院して彼女がいないことは一度もない。2時間くらいは必ず待つので、だんだんみんなイライラしてくる。特に年配男性は、彼女に突っかかって行くことも、ままある。しかしどんな時も彼女は「そうですかあ、大変ですねー、申し訳ありませんねー」と、深く深く頷きながら、柳に風と受け流す。しばらく彼女に文句を言った後、怒れる年配男性たちは、みな魂を抜かれたように大人しくなる。常連の女性とは「昨日はカレーライスで美味しかった」などと世間話をしている。のんびりした態度で全てを解決に導く神応対。ちなみにこのクリニックは、ほぼ全員そんな暢気な雰囲気である。院長はいつも「どうしましょうかねえ」と患者に判断を求めるし、神対応女性一緒に会計を務める男性職員も、寡黙で感情を面に出さない。癒される系のカスタマーサポートが、集客の秘訣なのだろう。

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