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飯塚周一「1本60円のアイスを売って会社の価値を4倍にした話 地域限定企業を再生させた経営哲学」

飯塚周一「1本60円のアイスを売って会社の価値を4倍にした話 地域限定企業を再生させた経営哲学」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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 新潟のセイヒョーは、アイス「桃太郎」製造販売で有名な老舗製菓メーカー。大手食品メーカーのOEM、新潟銘菓の笹団子、アイスキャンディーの安定した三本柱の事業を抱えていた。だから経営方針が明確でなくても困らなかった。しかしコロナ禍や小家族化で、従来の経営が行き詰まりを見せ始めた。さらに明治乳業からのOEM契約が終了して、大口の事業を失った。そこに追い討ちをかけたのが、東証の株式市場再編成による「流通株式時価総額基準」の未達による上場廃止危機だった。
 第10代社長に就任した飯塚周一氏は、定時制高校卒業の学歴で、47歳という若さで社長に就任した。結果として「セイヒョー」は、2022年から時価総額を4倍にした。では飯塚社長はどのような経営改革を打ち出したのか? ビジネス書としては、拍子抜けするくらいの素朴で常識的な内容である。積極的であること。謙虚であること。部下に任せること。人の話を聞いて歩くこと。当たり前のことを、当たり前に。しかし徹底的にやる。飯塚社長は、置かれた場所で咲く人である。
 「セイヒョー」が成功した理由は主に二つある。一つは社の方針をハッキリ打ち出したこと。大手食品メーカーのOEMだけに頼らず、自社オリジナル商品=アイスキャンディーに重きを置いたこと。そこには「桃太郎」という新潟地場強力ブランドを持つ誇りがあった。しかし生産能力を上げるためには資本が必要だった。二つ目に飯塚社長は、経営コンサルタント会社である「Wealth Brothers」と資本提携に踏み切った。第三者割当増資で得た資金で、工場設備に増産体制を敷いた。WBの石山社長と腹を割って話し合った上での、一歩前に出た勇気である。CMにも「放送事故」と呼ばれる老人恋愛のSNS広告を打ってバズった。ここでもクリエイターに「任せた」飯塚社長の懐の深さが感じられる。


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