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谷川俊太郎(文)、塚本やすし(絵)「にじゅうおくこうねんのこどく 二十億光年の孤独」
谷川俊太郎(文)、塚本やすし(絵)「にじゅうおくこうねんのこどく 二十億光年の孤独」(小学館)。電子書籍版はこちら↓
谷川俊太郎先生のデビュー作である。原題も本文も漢字である。1952年の作品なので、今から72年前で先生もまだ20歳。宇宙を題材にしたスケールの大きな巨視的作品で、しかもユーモアと哲学が効いている。非常に人気作で、谷川俊太郎先生のトークショーで女性ファンの大半が好きな作品に挙げていた。最初は先生もリップサービスで「そうですか、ありがとう」と答えていた。しかしあまりに「二十億光年の孤独」派が続いて、「それしか読んでいないの?」がポロッと出た。発言した女性が真っ青になって、書店員さんたちがオロオロしたことがあった。逆に言えば、それだけ谷川俊太郎先生にとって、存在の大きな詩だったのである。
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そんな記念碑的作品を塚本やすし先生が絵本化した。塚本先生はリブロ絵本大賞で世に大きく出た人だ。そういう意味で当時のリブロ池袋本店長だった、菊池壮一氏の功績は大きい。「にじゅうおくこうねんのこどく」は、塚本先生だからこそ産まれた絵本である。会った頃の谷川先生は、どんな仕事でも受けて下さった。しかし晩年の谷川先生は、気に入った仕事しかしなくなった。おそらく体調も崩して、残された自分の人生の中で出来ることを絞り始めたのだろう。そんな中で、塚本先生は野心的な企画を次々と持ち込んで、世に放ち続けた。傍から見ていて『谷川先生、塚本先生のことを可愛がっているな』と感じた。絵本は絵と文のマッチングである。だからこそ描き手と書き手の相性は大事である。
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