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小川糸「リボン」(ポプラ文庫)
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小さな命が、寄り添ってくれた。少女と祖母は家のそばで小鳥の卵を見つけ、大切に温めて孵す。生まれたのは一羽のオカメインコ。リボンと名づけ、かわいがって育てるが、ある日逃がしてしまう。リボンは、鳥の保護施設で働く青年、余命を宣告された老画家など、様々な人々と出会う。人々は、このオレンジ色の頬をした小鳥に心を寄せることで、生きる力を取り戻していく(公式解説)。
鳩🐦や鴉🐦⬛など野鳥には帰巣本能がある。しかし飼い鳥は窓から逃がすと帰って帰って来ない、というか帰って来ることができない。結果として野鳥や猫の餌になってしまうとよく聞く。だから窓からの放鳥とは、実質的に飼い鳥とのお別れである。拙宅でも一度セキセイインコ🦜がベランダの物干し竿にチョコンといて、思わず息が止まった。幸いにして、その時は部屋の中に舞い戻ってくれた。
祖母すみれと孫ひばりの幸福な導入部は、オカメインコ🕊️のリボンとの蜜月。しかしそんな幸せは、すみれのミスによる放鳥であっという間に崩れ去った。ここではリボンは野鳥や野獣に襲われることもなく、いろいろな飼い主のところを放浪する。その都度、飼い主の苦境を癒すカウンセラーとなっている。
鳥を飼ったことのある者にとっては、この話しは生存の奇跡である。『そんなことがあればいいなあ』と願うばかりである。わが家でも鳥たちは、ヤンチャで多弁で人懐っこい。そして何でもガリガリ齧ってしまう。特に連れ合いは鳥たちをこよなく愛し、鳥たちも最大の保護者である連れ合いを愛し頼りにしている。家庭の雰囲気を明るく賑やかにしてくれている鳥たちには深く感謝している。自分たちには「リボン」に登場するようなヒロインたちのような悲惨な生活はなかったけれど、癒やされたことは変わらない。
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本書の中で「とりの家」というシーンが出てくる。犬猫ではよくある、捨てられたペットの救済と里親探し。洋菓子の箱に閉じ込められて捨てられていたオカメインコ。救済されたからよかったが、羽根の音に気づかれなかったら生ゴミ化していた。『鳥にも犬猫みたいなことがあるんだな』と怒り💢が込み上げてきた。何と人間たちの勝手で、残酷なことよ。
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