「目黒のさんま」の立川寸志、めぐろパーシモンホールで真打ち目指す🐟
東京都立大学同窓会「八雲クラブ」が主催する隔月勉強会「八雲サロン」。講師は東京都立大学OBが原則。9月の講師は落語家の立川寸志。東京都立大学人文学部卒業後は、福武書店(ベネッセ)➡︎世界文化社を経て、一念発起して立川談四楼に入門。現在は二つ目。ただいま真打ち昇進を目指している。その前提として、通算1,000人のお認めが必要。東京都立大学同窓会としては、同窓生を応援📣するため、9月15日(日)に、旧東京都立大学キャンパス跡地である「めぐろパーシモンホール」で独演会を開催予定。まだ若干の残席があり、参加を呼びかけている。
https://tmu-alumni.jp/wp-content/uploads/2024/05/寸志独演会%E3%80%80チラシ.pdf
今回の八雲サロンでは独演会に先立って「目黒のさんま」の落語と解説。先ずは落語。「目黒のさんま」は古典落語の噺の一つである。ある殿様が目黒まで遠乗りに出かける。供の者が弁当を忘れて腹を空かせた殿様に、美味そうな匂いが漂ってくる。殿様が匂いの元を尋ねると家来が、それは秋刀魚を焼いた匂い。しかし秋刀魚は庶民の食べる下魚で「殿のお口に合うものではない」と返答。しかし空腹に耐えかねた殿様は秋刀魚を持ってくるよう命じ、家来は農家に頼んでもらってくる。直接炭火で焼いた秋刀魚は黒く焦げ脂が滴って、空腹の殿様はその美味さに大喜び。秋刀魚の旨さが忘れられず、殿様は客先でも秋刀魚を所望。庶民の魚で用意はなく、接待係は慌てて日本橋の河岸で調達し、調理に工夫を凝らす。低級な下魚である秋刀魚を、庶民流に焼けば美味だが、お殿様向けに馬鹿丁寧に調理すると似ても似つかぬものになる、という秋の滑稽噺。3代目三遊亭金馬が得意とした演目。立川寸志はアドリブも交えながら、話術巧みにして、絵になる身振り手振りで聴衆を魅了。「さんまは目黒に限る」という決め台詞がバシッと決まっていた。
続いて「目黒のさんま」を歴史的かつ地誌的に解説。先ずはロケーションとしての目黒。目黒は行楽地(目黒不動、行人坂、大鳥神社など)であり、農村(大根、茄子、瓜、筍の産地)であり、将軍の御鷹場でもあった(だからそばに鷹番という地名)。将軍の目黒訪問時には、家光が立ち寄った農民の営む「爺ヶ茶屋」があり、ここが「目黒のさんま」の農家モデル。落語の主人公は当初は松江藩主・松平斉恒だったが、やがて家光や吉宗の将軍となり、現在は架空のお殿様になっている。ところでなぜ目黒で秋刀魚なのか? 全く魚の要素がない場所である。しかしここには目黒川があり、品川湊から秋刀魚を舟で運んできていた。従って、目黒だから秋刀魚に出会える可能性があったという必然性があるのである。そして目黒は東京都立大学の発祥の地。ここでも目黒は欠くべからざるお題であった。