「Not for me.」
八重さんが以前住んでいた青森県弘前市では数年前「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。2020年12月05日土曜日の河北新報の記事を引用します。
以下『 』内、引用。
『青森県弘前市は4日、東北の自治体としては初となる、LGBTなどを含む性的少数者のカップルを婚姻に相当する関係として認める「パートナーシップ宣誓制度」を10日に開始すると発表した。制度施行に先立ち、手続きの詳細などを市のホームページ(HP)で公開した。
宣誓する場合は、事前に市企画課ひとづくり推進室に予約。住民票など必要書類を持参し、2人が宣誓書に記入すれば「受領証」を即日発行する。市窓口で受領証を提示することで、親族に限定されていた書類の代理申告などが可能になる。
対象は弘前市民で、両者か一方が性的少数者のカップル。同居の有無は問わない。トランスジェンダーなど戸籍上男女のカップルになるケースにも配慮し、同性間に限定しない。
制度導入に関して9~10月に実施したパブリックコメント(意見公募)には計89件の意見が寄せられ、賛成15件、反対44件だった。桜田宏市長は「制度は反対する人に何ら不利益や変化をもたらさない。当事者が抱える不安を軽減し、多様性を尊重するまちになるよう市民に働き掛けていく」と話した。』
引用終わり。
寄せられたパブコメは89件で反対が多数派。でも施行されました。反対意見の多さから市民の理解を得られていない、と反対する人もいるようです。
あなたはどう思いますか。制度に賛成ですか、反対ですか。また、反対のパブコメのほうが多いのに施行に踏み切ったことについてはどう思いますか。多数決に従うべきだと思いますか、それとも異なる意見を持っていますか。
ここから先は何らかの意見を持ったうえで読んでください。おっけー?
八重さんはこの制度に賛成です。市長の言うように、この制度が「反対する人に何ら不利益や変化をもたらさない」だろうと考えます。だから、反対のパブコメが多いことに首をかしげています。Twitterなどでは「自分には必要ない」と反対する人もいます。でも、その反対理由っておかしくない?
「自分には必要ないから、制度自体不要だ」ですって。ちゃんちゃらおかしいね。それはあなたのための制度じゃない。切実に必要としている人のための制度だ。少なくとも「自分には関係がない」とか「自分には必要がない」とかいう屁のつっぱりにもならん理由で反対すべきじゃないんだよ。多数派であるという、ある種の暴力をかざすべきじゃない。
八重さんはこんなとき、「これは私のためのものじゃないんだな」と納得できる人でありたい。この考え方を英語では「Not for me.」というそうな。
退屈な映画、面白くない芸人、不味い料理……あなたにとっては、でしょ?そんなときは胸の中で「Not for me.」とつぶやく。すると不思議にクスッとしてしまう。「私には合わなかったな、でも合う人もいるかもしれないんだな」と温かい気持ちになる。もやもやも減る気がする。
無自覚の批判を垂れ流さない。反射的に文句を言わない。許し合い、譲り合う。そんな寛容さが「Not for me.」にはある。
いつでも「Not for me.」とつぶやける。八重さんはそんな人間でありたい。
ちなみに。パートナーシップ制度の話になると決まって出てくる話がある。「同性カップルには生産性がない、だからそんな制度作るべきじゃない」という話だ。それって危なくないかな。生産性がない人間を切り捨てるのって、ナチスドイツの「優生学」(偏った価値観に基づいて、自身の都合で優れた人間を残して劣った人間を除外するという考え方)と何が違うの。
同性カップルの次は誰を除外しようとするのかな。老人かな。不妊治療してる人かな。障害者かな。金銭的余裕のない人かな。法律や倫理に逆らった人なら安心して叩き放題かな。その矛先が自分に向かない保証はないよ。向いたときにはもう遅いよ。
これを読む人には、どうか「みんなでよりよく生きる」という「福祉」の考え方を忘れないでいてほしい。
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