爪の先ほどのデートDVを振り返る

どこからが“それ”なのか、正直まだわからない。いわゆる“それ”に比べたら、そうは呼べないのかもしれない。けれど、誰かが私のように緩やかな苦しさを感じたとき、このnoteが助けになれば、と思います。
⚠このnoteにはデートDVに関する表現が含まれます。心身に負担がかかる可能性がある方はご注意ください。


デートDVの定義とか

先に言っておくと、恋人に暴力を振るわれるとか、過度な束縛があるとか、そういうことはありませんでした。しかしデートDVの定義を調べると、大体どこにでも以下の4つが挙がっています。

精神的な暴力
身体的な暴力
経済的な暴力
性的な暴力

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/date_dv/victim.html

私が遭遇した違和感を分類すると、おそらく下の2つ、「経済的な暴力」「性的な暴力」になります。それでもたくさんのサイトや資料に載っているような、「借りたお金を返さない」とか「無理矢理身体の写真を撮る」とか、そういうこともありませんでした。だから、その人とお別れをして別の人と付き合っている今も、それをデートDVと呼んでいいのか少し懐疑的ではあります。そもそも“暴力”って言われると、「そんな、そこまででもないよ〜」って尻込みしてしまう。というわけで、このnote内では“違和感”と呼んでみようかな、と思います。

お付き合いをしていた人のこと

昨年の春から冬にかけて、私はひとまわりくらい年上の男の人と付き合っていました。
もともと他人に対して無沈着な部分があり、何か思うところがあっても「まぁ他人と私じゃ常識も違うしな」と流してしまう私ですが、12年も自分より多く生きている人に自分の常識をあてがっても合わないことは分かりきっていたので、違う人の名前で呼ばれても通話中にAVの音声が聞こえてきても特に何も言いませんでした。唯一苦言を呈したのは、通話していた時のことです。

しこりになったこと


夜の通話中に散歩をするのがルーティンだった頃、私は一度痴漢に遭いました。襲われかけた、に近いのかもしれません。目があったと思ったらゆっくり近づいてきたその男は、私の服の中に手を突っ込んできたのです。私が硬直してスマホを落とすと、その音に驚いたのか男は逃げていきました。
それだけのことです。でも怖くて、過呼吸になって。落ち着いてから私は、電話の向こうの彼に状況を説明しました。
「すみません、今、……痴漢?に、……襲われかけ?て……」
自分でもあまり理解できていなかったように思います。それほど衝撃的でした。すると彼は笑いながらこう言ったのです。
「え〜、うっそぉ」
頭がチカチカしました。
そのあと私は訥々と、「ただでさえ怖い目にあったのに、その上疑われるのはとても恐ろしくて悲しいことだ」「あなたの妹や後輩が同じ目に遭ってもあなたは同じように茶化すのか」と説きました。冷静だったのではなく、悲しかったのです。
このとき、彼の返答はこうでした。
“男である自分はそういうこと(性被害)が身近にないからわからなかった”
私は傷つきながらも、そういうものなのか、と自分を納得させました。けれどこの出来事は、違和感としてその後残り続けることになりました。

違和感のこと

それから4ヶ月ほど経って、私は今の恋人たる職場の先輩からアプローチを受けていました。その相談を友達にしていたとき、流れで当時の恋人(12歳上の彼)の話になりました。そこで、数々の違和感を初めて人に話すことになったのです。

お金のこと

詳しくは以下のnoteで書いたことがあるのですが、

簡潔に言うと、私のお金を私の自由に使わせてもらえないことが多々ありました。
私たちは考え方が180°違っていたのです。安いものを次々買い替える彼に対して、気に入ったものを大事に使いたい私。傘やメモ帳、服など、彼は度々私のモノへの考え方を否定し、自分のやり方で買い物をさせました。おそらく、彼自身の経験から私をいい方向へ導こうとしてくれていたのだとは思います。しかし、それは時に窮屈で、考え方の違いを受け入れてもらえないのは悲しいことでした。そして、人それぞれ違う考え方を尊重したい私にとって、度重なる自分の考え方への否定は違和感だったのです。

性のこと

彼は性欲が強い人でした。私も求められるときは応じたい、と思って、それに応えました。休みが合わず、週に一度会える程度だったので、会って食事をしたり、デートをしたりするのは楽しみであり、頑張るかてにもなっていました。けれど付き合った9カ月のうち、どこか遊びに行ったデートというのは数えるほどでした。ほとんどの場合行き先はラブホテルで、彼にとってはそれがデートだったみたいでした。もしくは夜、仕事の終わった彼のもとへ出向き、彼の住んでいたマンションの駐車場で性行為を強要され、そのまま私は車で、彼は自分の部屋で夜を明かし、次の日駅まで送ってもらって解散、という一連の流れも、彼にとってはそれもデートだったのかもしれません。これは付き合ってどのくらいから始まったのか分かりませんが、一度車内で熱中症になりかけたので付き合い始めて3ヶ月頃からあったことのように思います。そのうち私のアパートまで夜来てもらい、行為をし、朝解散する、という流れになりました。
お気づきかもしれませんが、いわゆる一般的なお付き合いとは少し違っていたのです。言葉を選ばなければ、(彼にそのつもりがなくとも)性処理に使われていたのかもしれません。
正直言って嫌でした。ハグがしたかっただけなのにな、と思いながら、彼を受け入れていました。ラブホテルで見せられたAVも、正直なにが良いのか分かりませんでした。車の中で避妊具をつけない彼に、それを指摘するのも怖がっていました。
たまにはちゃんと、手をつないで遊びに行きたかった。
これらの違和感を、すべて「他人と自分の常識は違う」で片付けてしまっていたこと。それは、もしかして、デートDVを受け入れてしまっていた、ということになるのかもしれません。

お別れに至るまで

他にも、約束をドタキャンされたりなどの小さいことがいくつかあって、私は笑いながらその話をしたのですが、友達の顔はみるみる引きつりました。
「それ、人権侵害レベルだよ。やばいよ」
大げさだよ、と笑って済ませはしたものの、その日解散してからもその言葉は心に残りました。そして、ずっとしこりになっていた出来事について、彼から挙げられた「男性だから」という理由について、男性の意見を聞いてみようと思ったのです。
そこで相談したのは、アプローチしてくれていた職場の先輩と、恩師の2人でした。こういった込み入った話ができそうな男性が周りにいなかったのです。結果、二人はそれぞれ「ありえない」と言いました。先輩に至っては、普段怒らないのが嘘のように怒っていました。
「振ってやんなそんなやつ」
彼は言いました。その言葉で、あ、それでもいいのかな、と思いました。
私にはその選択肢があったのだということをすっかり忘れていたので、驚きさえしました。そう言われた瞬間、なぜ今付き合っているのかわからなくなりました。
そうして私は、当時の恋人とお別れする道を選んだのでした。

デートDVだとしても、そうじゃないとしても

お別れをして、新しいお付き合いが始まって、半年経った頃。ようやく私は冷静に当時のことを思い返せるようになってきました。
そこで、もしかして微妙にデートDVに抵触しているのではないかな?と思い至ったのです。調べて、考えて、調べて、考えて、いわゆるデートDVとは少し違うかもしれないけれど、私は確かに傷ついていたな、と気がつきました。
ここは嫌だけど、他にいいところもあるし。
そう考えるのは、恋愛に限らず人間関係すべてにおいて大切なことだと思います。人間は多面的な生き物です。でも、それは相手だけじゃありません。自分だって多面的です。その人のことを好きな自分も、傷ついている自分も、どちらも自分なのです。
デートDVかそうじゃないのか、決めるのってすごく大変です。相談して決めてもらうのも、同じくらい大変。だから、違和感を覚えた自分を大事にするっていう指標がひとつくらいあってもいいんじゃないかな、と思います。別れるか別れないか、白と黒の二択じゃありません。その間に、違和感を覚えた自分がどうしたいのかを見つめ直すって選択肢があるってこと、忘れたくないし、忘れてほしくないと思います。
私は専門家じゃないから偉そうなことは言えないし、ここまで書いても正直自分が抱いてきた違和感をデートDVと言い切ることはできません。でも、もし私のようなモヤモヤを抱えたことがある人がいたら、その人に寄り添って抱きしめてあげたいなと思います。

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