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秋晴れのラブレター #1年後の私へ

この時期は、これからやってくる冬をつよく感じるね。
いつ雪が降るんだろう、もう暖房つけていいのかな。
答えがない、自分の力でどうにもできないものに、どきどきする季節だね。

その怯えを抱いては、「このままでいいのかな」なんて漠然とした不安に襲われるよね。
でも、大丈夫だよ、それ毎年のことだから。

もし例年のごとく忙殺されているならば、まずは晴れた日に散歩してください。
紅葉がとてもきれいだし、空気がおいしいから。

ひとりで行くことをおすすめするよ。
あなたを大好きな旦那さんはどこでもついてきたがるから、寝ている土曜の朝がおすすめ。

ちなみに、散歩を提案してくれたのも旦那さんなのよ。
来年の私、すっかり忘れていそうだけれど。

「スマホも何も持たないで、歩けるところまで歩いてみれば?」
「家は職場だし、生活そのものだから、家にいると逆に休めないのかも」

そう提案されて、翌日すぐに秋晴れの朝歩きに行った私を、思い出して。

とても美しかったでしょう。
空と緑がぱっと視界にひらけた瞬間、息をのんだ。

たった1時間歩いただけなのに大冒険した気分に満たされた。
悩んでいたことが、実はどうでもいいことかもって思えた。

2万歩くらい歩いたんじゃないかしら、って確認したら1万歩にも満たなかったの。
そのあとは、自分の生活をどう立て直したいか、紙に書き出したよ。

1年後のあなたは、きっとこの紙に書いたことも忘れちゃってるんだろう。
また同じようなことを盛大に悩んで、立ち止まってるのかもしれない。

でも、それもあなただし、私なんだ。
もう、私たち、そんなに激変できる年齢じゃなくなっちゃったから。
若い子たちの速度や熱量を見て、うらやましく思うようになったから。

それでも少しずつは変わっているのよ。
焦らなくたっていい、私たちには重ねた年月があるんだし。
それを武器にしなくとも、愛されることを知ったから。

忘れちゃってるかもしれないから、一応伝えておくけれど。
あなたはスペシャルです。
まぎれもない、特別な一人です。唯一無二です。

わざわざ強みなんて五本の指で数えなくていいよ。
秋晴れの空の下、生きていることに泣けるあなたはほんとうに美しいから。

何度だって自分のことを疑って、自信を失って、自分の美しさを忘れるね。
それでもいいよ、そうやって悩みぬいて、もっともっと美しくなりなさいな。
自分で気づかないうちに、少しずつ。

いま、私は来年のあなたに会えるのが楽しみでしょうがないよ。
旦那さんにばかり言われてしまって、なかなか普段伝えられないんだけど。

あなたのことを愛しているよ。

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宿木雪樹(やどりぎゆき)
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