
私の独学合格法★日本語教育能力検定試験
私が試験を受けたわけ
私は中国の大学の日本語科の日本人専任教師だが、実は資格も経験もまったくなかった。
一応、日本語教師として雇われるには、資格や経験がいるようだけど、とりあえず四年生大学出てればなれることもあるようで、私の場合は「仕事くれ」と直談判。縁やツテを活かすのもまた自分次第。
実際420時間講座の日本語教師の資格を持って採用されても使い物にならんなんてこともあり、資格がそのまま教師の能力とは言い切れないし、「教える能力」はまた別の話。
それに中国の大学の場合、基礎文法は非常に優秀な中国人の先生たちが教えてくれるので、日本人教師は中国語さえ話さなくていいと言われている。
とはいえ、ここ数年の間に学生たちのレベルも更に上がり、大学院生や日本語教師になった卒業生たちに更に高度なことを教える機会はどんどん増えたし、自分のレベルアップも必要と考え、試験を受けることにした。
勉強環境
私の場合、地元にいるとまず友達と遊んでしまうので、地元を離れた島の古民家にヤドカリさせてもらい、勉強するための部屋を作った。会話相手は猪だけ。後半さすがに寂しくなって島で知り合ったウルグアイ人のところに通っていたものの、勉強のために環境を変える! 期間を限定する! これは、私のようにぐだぐだな人間にとっては、「さあ、勉強するぞ!」の切り替えになっていいと思う。

島の神童が使っていたという伝説の机でご利益をもらう。
YouTube動画活用
★ももこ先生
「こんにちは、ももこです」の声からもう素敵!
ヨーロッパで声楽を学ばれた歌手でもあられるももこ先生の美声を聴くだけで勉強の効率上がることまちがいなし。
私はももこ先生動画をすべて見てノートにまとめた。

赤本を見ても言い方が回りくどいというか難解だし、時系列もよくわからない。
それをわかりやすい言い方で、順序だててまとめてくれたのがももこ先生である。
ももこ先生動画でノートまとめながら、赤本も見て、書き足しも多少しているけれど、動画を先に見てるからこそわかるといった感じだ。
ノートの取り方は人それぞれだけど、私の場合は、色で覚えるところがある。さらには絵。ももこ先生動画でノートをまとめて、さらに動画を何度か聞く。するとノートの文字が色と共に浮かび上がってくる。
ちなみに私はももこ先生のファンなのでYouTubeで感謝のコメントも何度かしたことあるし、そのたびにももこ先生は誠実に対応してくれた。
合格した時は、Thanksでパルムを献上した。
※ももこ先生は普通のパルムがお好きなようである。
ももこ先生動画を見てよかったと思うのが、バイリンガル問題を知ったこと。日本語教師になる前は紙芝居師で子どもに絵本も描いていた私は、母国語が日本語ながらも適切な日本語教育がされていない子どもたちのために何かできないだろうかと思うようにもなったのだ。
私は自分が育てたクラスの学生たちを日本語嫌いにされてしまったことから、420時間講座上がりの日本語教師をまったく信用してなかったけれど、ももこ先生はそんな私の考えも変えてくれた。教えることと知識を詰め込むのは別ではあるけど、それでもしっかりとした知識や体系化は必要で、両方兼ね備えているももこ先生みたいな先生が一番いいと思う。
ちなみにももこ先生はnoteもやっておられる
【日本語教師になる】ももこ|note
★大根先生
ももこ先生動画から知った大根先生も私の強い味方であった。
大根先生のマインドマップもわかりやすくてすばらしいが、私が何より繰り返し聴いたのは、一問一答である。
日本語教育能力試験を体験すればわかるが、とにかく時間がないと感じる。迷っている暇なくどんどん選択して答えていかなければならない。
スピードを鍛えるためにも、この一問一答をやるべきだと思う。
大根ブートキャンプはいつも歩きながら聴いていた。特に後半、勉強が辛くなってきたり自信がなくなってきたときは、大根隊長に気合を入れてもらっていた。
ちなみに、ももこ先生の音声問題もよく島の海辺を歩きながら聴いていたけれど、この歩きながら問題を解くというのも勉強のおすすめポイントである。
昔、東大生が全力疾走しながら暗記していたのを見たことがあるし、散歩しながら思考することの効果の具体例として、古今東西、哲学者、宗教者、小説家におけるエピソードは枚挙にいとまがない。
ももこ先生動画も大根先生動画も聴いているだけでも十分に効果があるので、二回目三回目となったら、歩きながら聴くというのを推奨する。
私はほかの日本語教師動画も何本か見たが、私のコメントにきちんと対応し、温かいコメントを返してくれたのはこの二人だけだった。動画を通しても思うけれど、人に寄り添う気持ちがすごくある。独学で勉強するのは、ある意味孤独なことだけど、そんな気持ちをすごく理解してくれているような気がする。
大根先生もnoteをやっておられる
研究 日本語教育能力検定試験|note
音声問題対策
まず自分のレベルを知るために過去問をやろうとしたが、第一問は必ず音声記号問題だ。はっきりいって、全然わからなかったし、赤本パラパラ見ても一番意味不明で不安になる部分だ。

不安になる部分は最初に慣れ親しんでおいたほうがいい。
だから私はまず音声分野の問題からとりかかった。その時点で五月後半。
初めはノートに書いていたけれど、次に画用紙で大きめのカルタのようなものを作り、表にこの謎の横顔図、裏に謎の音声記号と調音点調音法の名称等を書き、朝起きてすぐと寝る前に一人カルタをやっていた。
リニューアルを繰り返しながらもボロボロになったためすでに捨ててしまい、現物が今はないけれど、この一人カルタ方法はいいと思う。
そして大事なのは下手でもなんでも自分で絵を描くことだ。
それにより舌の位置なども確認できる。
舌の位置といえば、私は勉強中こんな絵も描いている。

「お」と「う」は舌が後ろだから控えめな陰キャで「お、おう…」と後ろにあとずさり。
「あ」は「あーあ」って感じの中立どっちにもいかないノリ。
学習者の発音の間違いを指摘する問題では、その間違いが何によって引き起こされているのかを瞬時に判断し選択しなければならない。

この問題は調音点と調音法表さえあれば、実はそんなに難しくない。
だから私は試験問題の用紙に直接書いた。

問題と問題の間には時間があるし、問題用紙には余白があるので書き込み可能。自分だけがわかればいいから、かなり簡略化しているけれど、これがあることでまず余裕が出る。
だから私はいかにこの図が早く書けるかの練習をした。
それは、模擬試験練習段階でいいと思う。
それまではノートにまとめておいて、イメージをしっかり頭に入れる。

ちなみに私が傑作だと思う問題はこれだ。
私は毎朝八時に「しっきん」します
これが音声で流れてくると爆笑必死。
なんで毎朝八時に「失禁」するんだよ!笑
ちなみに正解は「出勤」。
日本語教師になったら学生のこんな言い間違いを聞くのはしょっちゅうで楽しいけれど、笑ってばかりもいられないし、学生は真剣なので、ちゃんと直してやらなければならない。
実は日本語教師試験の勉強をして一番役立ったのはこれである。
学生の言い間違いに対して、修正がしやすくなった。
いくらネイティブの真似しろと言ったって、聞いてるだけ見てるだけでは直せない。
もっと具体的に舌の高さや位置を説明したほうが劇的に直る。
この部分は、日本語教育試験でも得点源になる部分だし、実際日本語教師になってからも役立つ部分なのでしっかり勉強して絶対損はない。
さらに、アクセントの練習に関して、私が活用したのはオタマトーンである。
たまたま知人にもらったのだが、このオタマトーンは音階をとるのが難しい。だからこそ、外国人学習者の微妙な音のはずれっぷりを再現するのにちょうどよかった。
ももこ先生動画でも音声問題対策は充実しているのだが、おそらくももこ先生は絶対音感をもっていて、とてもわかりやすく音階になってる。
でも実際の外国人のアクセントはもっと微妙というか、はっきりいって音痴じゃない人が真似するのは難しいところがある。
なので私は実際試験にも使われた音声問題をiPhoneに入れて毎日聞いていた。おもしろいもので、国によってイントネーションの特徴も違うので、余裕があれば各国の人の日本語を聞いてみるのもいいと思う。
いずれにしても音声問題はピアノと同じで毎日少しの時間でもやったほうがいい。やらないと途端に勘が鈍ってできなくなる。
ちなみに私が気になっていたこと。ももこ先生と大根先生は関西圏の人なんだろうか……。うっすら気になったけど、結局わからずじまい。
あと、私が実は音声問題で一番苦手だったのは問題5。
日本語学習者向けの聴解教材に関しての問題。なにせ自分が作る聴解問題とは違い過ぎて戸惑った。まあ私が作る聴解問題、基本ネタみたいなものだから、オチがないだけでもやっとするという笑
これに関しては簡単という前提があるのかYouTubeでも攻略法やってる人もあまりいなくて、唯一言及している人にコメントで質問したけど返事もなかった。
自分なりに解決した方法としては、とにかく自分が学習者になったつもりで「聴解問題を回答する人」になりきり、とにかく問題を書けるだけメモした。しかし、私は字が下手でメモも苦手なので、やはりここが苦労した。まあ、でもこの問題が苦手な人自体少ないようだし、この攻略法に悩んだのは私だけなのかもしれない。でももしや悩む人稀にいるかもと書いてみた。
過去問を繰り返し解く
これはどんな受験勉強でも大事なこととして知られている。
私は過去問は過去六年分三回ずつやった。
最初は過去五年分でその後最終調整でもう一冊増やした。
日本語教育能力試験の問題の出し方に慣れることがまず大事。
まず「不適当なものを選べ」の罠には絶対に引っかかってはいけない。

四択か五択なので、とりあえずざっくり見てすべてに〇と×をつけて、一つだけのものが回答だと見極めるというのが確実な気がする。どうせ選ぶのは一つだけなので。ただ迷った時が困るけど。
過去問は時間も計りながらやった。なるべく一日で試験Ⅰから試験Ⅲまで通してやるようにした。
過去問に解答はついていないので解説サイトのお世話になった。
特に私が見たのはこちらの二つ。
日本語教育能力検定試験 解説 | 毎日のんびり日本語教師 (nihongonosensei.net)
【日本語教育能力検定試験 過去問解説】日本語教育ナビ | 日本語教育ナビ (japanese-language-education.com)
わたしは特にむきえび先生のサイトは隅から隅まで見て、練習問題もすべてやった。
この方もすごく学習者の気持ちに寄り添ってくれる方で、私が試験当日、惨敗と思って凹んだ時も温かい言葉をかけてくださった。
過去問解説サイトは病院のセカンドオピニオンじゃないけど二つ以上は見た方がいいと私は思っている。
人によって説明の仕方が全然ちがって、自分の腑に落ちる説明というのがあるからだ。どちらも正しいのだけれど、その問題によっては、こっちの説明のほうがわかりやすい!みたいなこと。
そして過去問で間違えた部分は必ず携帯の暗記メーカーに入れた。





過去問は初めは全然点数が取れなくて本当にびっくりする。
でも間違った部分を繰り返し覚えて行けば、当然三回目の頃にはずいぶん間違いも減ってくる。
これは紙に書いておくといい。自分が進歩したことを実感できるからだ。


これが終わったところで、前述したとおりさらに過去問一冊増やしたけれど、これは模擬試験さながらに、試験時間に完全に合わせて外で食事もしつつ、図書館でやった。

ちなみに島の図書館は年寄りの憩いの場らしく、他の図書館じゃあり得ないぐらいうるさかったけど、それも不測の事態に備えるという訓練にはなった笑
過去問の回答部分は印刷して、マークシートを塗りつぶす練習も兼ねて回答する。私は大根先生のアドバイスに従って、鉛筆の両端を削り、長さも自分が一番塗りやすい長さになるまで鉛筆を使って本番に挑んだ。
記述問題
日本語教育能力検定試験の合格点目安は160点ぐらいなので、マークシートでそれぐらいいけば、まあすでに合格。だからまずはマークシートでしっかり点数を取れるようにがんばった。
しかもマークシートで6割はとれないと、記述問題は採点してもらえないという話もあるし、とにかくマークシート部分はまず先に強化する必要がある。
なので、私が記述対策に入ったのは、試験の一ケ月前ぐらいだったと思う。記述問題は20点。おろそかにはできない。
この対策に関しては大根先生の動画を参考にしたりした。
あとある程度、言葉遣いとか書き方が参考になるように、過去問の模範解答はもちろん、ほかにも過去問関係のサイトの回答例をざっと見た。
記述試験はキーワードを使って答える問題だったので、まずはキーワードの意味をざっと問題用紙に書き、答えやすそうな組み合わせで文章を組み立てた。
私は記述問題のために40分時間を残すように過去問を解くようにしていたし、本番もそれで挑んだが、はっきりいって時間が足りなかった。
本当はまず下書きを書いてから清書で答案用紙に書くのがいいのだが、そんな時間はなく、段落に分けてざっと書き、後は字数合わせで消したり加筆したり。
記述問題は学習者に自己評価をさせることについてのことだったが、時間がないあまり、私は避けようとしていたことをやってしまった。
それは自分の経験と信念に基づいて書くということだ。
はっきりいって、試験に合格するためならば、実際の現場とは多少ちがっても、模範とされるような内容を書いておけば点数は取れる。逆にいえば、実際はこうだということをベースに答えると間違えることもある。
求められているのは、正解とされる回答を覚えて答えることなのだ。
でも不本意ながら、あまりに時間がないので、記述に関しては自分が教師として信念にしていること、自分の経験から培ってきたことをベースに「学習者の意欲低下になることは避けるべし」を軸に書いた。じゃあ、そのためにどうするかは経験に基づいて書いた。
もうだめだこりゃと思った。
しかし、意外や意外、おそらく記述で私は思ったより点数が取れた。
大事なのは説得力なのだろう。日ごろから信念をもってやってる部分なので、一貫性がありブレてなかったとも思う。
実際は何点か知らないけれど、マークシートの自己採点はボーダーギリギリかそれ以下の惨敗だったので、20点満点の記述で少なくとも15点はとらなければ合格していない計算だ。
確実に言えるのは、字の汚さは関係ないということだ笑
ただ、汚くても、読みやすい字を書くことは心がけたほうがいいと思う。
文章を書く仕事をしていたことや、普段作文授業をしていることも少しはプラスになったかもしれない。
何にしても、マークシートだけで合格できるとは思わず、記述もしっかり準備をしておいたほうがいいことだけはまちがいない。
最後は記述に救われるなんてこともあるわけだから。
おわりに
私が日本語教育能力検定試験のために買った教材で主に使ったのはこれ。
・日本語教育能力検定試験 試験問題(平成28年~令和3年)
・日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド第五版(通称 赤本)
・日本語教育能力検定試験 対策問題集(アルク)
・日本語教育能力検定試験 用語集(ヒューマンアカデミー)
ほかには授業でも使う文法書や音声学の本も一応読んだし、息抜きに日本語関連の本も読んだりした。
これらの本はメルカリで売買できるし、人からもらうのも手である。
本以外には映像を活用した。
日本語教育といえばどうしても戦争や植民地支配とは切っても切り離せない。その辺の歴史的事情は映画などをみるとさらに理解が深まる。
特に中国は自分が働いてる国なので、「大地の子」全話観たり、「金陵十三釵(日本未公開)」を観たり、中国の歴史や事情に詳しいつっちー(中国に留学に来てた日本女子)から色々知識を学ばせてもらった。
私がこの試験勉強で学べたこととして非常に大きい。己の無知を知った。ここで色々学ばなければ、学生たちが「先生が好きだから日本を好きになった」と言った言葉の重みを知ることはなかっただろう。
また、試験勉強を通して、この資格があればJICAで日本語教師として派遣されることも可能ということも知ったし、技能実習と特定活動の違いなども学んだことで、国内の外国人の友人たちにも役立つ情報が得られた。
授業法の勉強も種類が色々あっておもしろかったけど、特にCLL(Community language learning)には興味を持った。なぜなら、自分が日本語で学生のカウンセリングをする機会もあるからだ。どこかで本格的に授業法としてできたらと思うようになった。
まあ、このように試験に合格する結果だけがすべてというのではなく、試験勉強や資格取得はそこから広がる何かのための通過ポイントだと思う。
正直言ってこの試験受かったからとて、すぐ日本語教師でやっていけるかというと決してそうではない。だけど、ここで学んだことは授業の中でも役立つと思う。私は学んだこと自体を授業で取り上げたりもする。大事なのは「日本語っておもしろいよね」ってことだと思うし、モチベさえ上がれば学生は勝手に勉強するのである。だから私は自分が試験勉強を通して学んだこと、おもしろかったこと、日本語への新たな発見などを学生たちに伝えている。
そして私が教えているのは日本語専科の大学生なので、当然日本語能力試験はN1まで受ける。
私は私が合格するために自分がやってきた勉強法や対策なども伝えている。私は学生の気持ちに寄り添うことを何より大事にしているので、試験に挑む学生たちの気持ちがわかるという点でも今回の試験を受けてよかったと思っている。
何しろ試験当日はもう絶対落ちたと思えるぐらい惨敗気分だったのだ。
何はともあれこの試験勉強は楽しかった。日本語教師としての視野が広がることは間違いない。日本語の面白さ、素晴らしさに気づかされると思う。
なお、独学で短期間で合格することは可能だ。
私の場合は約四カ月の独学、YouTubeと過去問メインの学習方法で初受験合格だった。
たいへんなのはむしろ日本語教師になってからだと思う。
何がたいへんって何しろ薄給。あと国内で働いたことないから知らんけど、なんか国内のほうが雑務に追われてたいへんそう。
まあよほどこの仕事が好きとか信念あるとか変な人じゃなきゃ続かないと思う。私の場合はなりゆきで、これまでの仕事のうちの一つだけど、なんだかんだで楽しいから一番続いてる。六年だけど笑
楽しみながら、試験勉強をする。
自分の日々の進歩を喜ぶ。
結果は後からついてくる。