あたしの精神疾患
離人症
あたしの最初に自覚した疾患はこの”離人症”。
子どものころ、母に”いけないこと”をした時に入れられた蔵のような真っ暗な部屋でのあたしが起こした防衛反応からだと思う。
”いけないこと”と言ってもすごく悪いことをしたわけではない。
ただ大きなこえで泣いたとか、いつまでも泣いているとかそんな感じ。
祖父がうるさくすると機嫌が悪くなるからという理由で、あたしは”うるさい”存在になると蔵の中に封印されたのだ。
真っ暗な部屋。
隙間から光が入ることもなく、目を開けているのかどうかも分からなくなる部屋。
通称”くらいとこ”は今でもあたしから離れずに、あの暗さ、あの匂い、あの感覚……。思い出そうと思えばすぐにあの頃に戻れる。
怖いなんてものではなかった。
孤独でいつ出してもらえるのかわからない。どうせ真っ暗なんだから眠ってしまえば少しはマシになると思い目をつぶると見える赤色の風景。
そんな中であたしは離人症になってしまった。
真っ暗すぎてその中では離人になっているのかも気づかなかったけれど、小学校3年生の時には、心に負担があったときなどに症状として現れるようになっていた。
離人症。
心と身体が離れたように現実感がない状態になる病。
あたしの場合は心が閉じ込められて自分の体を操縦しているような感覚になる。自分という心は小さくて見ているものは遠くに、自分の手も足も全てすごく大きく感じる。
ガンダムを操縦したことはないけれど、きっとアムロはこんな感覚なのではないだろうか?
大人になって医師から離人症だと診断されたとき、少しほっとした。
この変な感覚はみんな感じるものではなく、病気だったということが分かっただけで、症状が出ても「いまは離人の症状だ」と安心できるからだ。
そしてこの病気が発端ではないだろうけれど、あたしにはまだ数種類の疾患があって、そちらのほうが今の生活を送るうえであたしを苦しめている。
夜蝶観音