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【エッセイ】夜が長引く(Ⅵ)

 お風呂に浸かった途端に目の前が滲む。十一月の半ばに最後の理科研究発表会を終え私は引退した。肩の荷が下りてほっとしたのと同時に急激な喪失感にも襲われた。明日も明後日も、これからの放課後に空白が生まれることを想像しては、勝手に寂しくもなった。これまでずっと充実した日々を送っていたんだとも気付いた。本当にあっという間だった。研究会の打ち上げの最中には色紙をもらった。それと日誌のコピーをまとめたファイルも。人の知らないところで、一頁毎に、印刷をかけたり、さらに絵を描くのが上手い子が再現した表紙の落書きに対しても、どこに労力使ってるのよと後輩の前では笑い飛ばしつつも本音を言えば、嬉しかった。これは憶測だけれども、きっと家に帰った段階では切なさと感謝がごちゃ混ぜになっていて、独りきりになれたタイミングでプライドの膜が剥がれて爆発するように内側から込み上げてきたんだと、思う。