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【エッセイ】苗字

 珍しい苗字ですね、とは、よく言われる。何回かに渡って読みを確かめられた最後にだ。さらに付け加えると、インパクトが強烈なのか忘れられたためしがこれまでほとんどない。一度でも説明が済みさえすれば、以後、しっかり顔と一致させて覚えてもらえる。
 逆に、初対面の相手がはじめて見聞きする姓を名乗った場合は、内心では、ここに同士がいたぞ、と自然と仲間意識が芽生えてくる。下の名前で呼ぶのは身内くらいですよねえとか、電話だと伝えにくくはありませんか、などと声を掛けてちょっぴり悲しいあるあるを分かち合って盛り上がる。口下手な私が救われる、人との距離が縮まる会話のきっかけである。で、一定数いるのが、興味本位でルーツを辿った熱心な方。先祖の生まれた地域や職業について事細かく教えてくれ、そんな風に、詳しく由来を語られれば思わぬ勉強になるし、とても愛着を持っているのだろうなとまるで自分のことのように誇らしくなる。

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