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【エッセイ】もうひとつだけ
例えばクリスマスにフライドチキンを買うように我が家はお盆の昼間にいなり寿司を作るのが恒例となっている。夕飯はもちろん、仏壇にあげる、また、その日の墓参りの後に訪れる来客をもてなすため、と、活躍の場が広い。炊飯器に残ったお米を寿司桶に入れてから粉末状の酢を振りかけしゃもじで混ぜていく。水で両手を濡らし、一口サイズの酢飯を握る。最後に、わさびをつけたうえで、市販の油揚げで包む。甘塩っぱさの中にツンと鼻を通り抜ける特有の辛みがいい。白胡麻があれば、尚更良かったのだがこれでも十分。次々と頬張れるので、腹八分目に抑えられるか自分のことなのに怪しい。
この時期に太る原因がこれだとわかっていても止まらず、正直、食べてる量自体が途中でわからなくなる。お茶碗で換算したら明らかに一杯分は優に上回ってるはずだけれどももうひとつだけの連続で箸が進むのだ。ご飯が隠れさえすれば、罪悪感が消えるのは確か。