読売新聞の提言(3)(「作文」の読み方)

 2022年11月13日の読売新聞(14版・西部版)。「防衛の視座」の「下」。最終回は、こんな見出し。(番号は私がつけた)
①長く守る 補給能力を強く
②装備移転拡大 官民協働で
 戦争は「消耗戦」。どれだけ軍備を持っているかが勝負になる。だからこそ、消耗しないうちに敵基地を攻撃する(反撃する)のじゃないかなあ。装備の移転(移動、運搬)に民間が協力するとなると、これは「持久戦」だね。「持久戦」を狙っているのだとしたら、敵基地を攻撃するミサイルなんていらないね、ということは、まあ、保留しておいて、「作文」を読み進める。
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 10月28日、北海道の陸上自衛隊矢臼別演習場。北部方面隊第1特科団が、敵の着上陸阻止を想定した実弾演習に臨んだ。(略)実弾演習は、部隊の練度を保つために欠かせないが、予算制約が大きい自衛隊では機会が少ない。203ミリの実弾射撃は特に珍しく、別の訓練に参加中の隊員らが見学し、歓声を上げた。
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 訓練段階から「実弾」が少ない。だから本当に戦争がはじまれば、それは「少ない」どころではなくなるね。それにしても「別の訓練に参加中の隊員らが見学し、歓声を上げた」は傑作だなあ。「見学」というよりも、単なる「見物」だ。読売新聞は「実弾」を気にしているが「隊員」の資質は気にならないらしい。自分は戦争には行かない(免除される)と信じ込んでいる。
 で、装備だが。
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 予算は、護衛艦などの正面装備に優先的に振り向けられ、弾薬やミサイルは後回しにされた。自衛隊内では、「大規模紛争になれば、対艦ミサイルは持って1週間だ」との声も漏れる。(略)国主導で弾薬の生産ラインを作るなど、自衛隊の補給能力を強化することは欠かせない。
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 「自衛隊の補給能力を強化する」とは、その直前に書いてあるが「国主導で弾薬の生産ラインを作る」ことだ。つまり軍需産業を充実させる。
 でも、本来つかうことを目的としていない武器をつくって、どうなる? 余らない?
 こういうことは、私だけではなく、ちゃんと国も考えている。
 どうするか。
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 防衛産業を成長産業に変えるには、装備輸出の拡大が鍵を握っている。装備品の移転によって、海外に販路が広がるだけでなく、他国との防衛協力を深化させ、絆を強めることも可能となる。
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 すごいなあ。ソニーのウォークマン旋風はアップルの製品に置き換わり、ソニーには売るものがない。トヨタのハイブリッド車はEVに乗り変わられ、トヨタも売るものがなくなる。輸出産業は、円安とはいえ、円安だからこそ原料輸入に金がかかるから、もう全滅だね。だから、軍需産業で金を稼ごう。
 これって、アメリカの軍需産業の後追いだね。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、アメリカの軍事産業はおおもうけをしている。大儲けを持続させるためには、ウクライナの戦争を長引かせる必要がある。だから、アメリカは早期終結に、本気で取り組まない。そのアメリカの荒稼ぎを見て、日本もそれをまねすべきだというのである。
 とてもわかりやすい。
 軍事産業といわずに、「防衛産業」という。ここも、ミソ。「敵基地攻撃産業」になってしまうと、戦争が終わってしまう。それでは、もうからない。
 こういう文章もあった。
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 自衛隊幹部は「ウクライナはロシアに攻め込まれてから強さを示したが、当初は侮られたことで侵略を受けてしまった。日本を攻めても、『泥沼になる』と思わせることが重要だ」と指摘する。
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 「泥沼になる」(戦争が続く)は、軍需産業で「製造」がつづく。軍需産業の金もうけがつづくということである。
 でも、いくら「装備」があっても、絶対的に足りないものがある。そのことは、読売新聞記者もきちんとレクチャーを受けたらしく、最後の方にこう書いている。
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 防衛省は、FFMを計22隻建造する計画だ。海上自衛隊は警戒監視任務の増加や、護衛艦の乗員確保に頭を悩ませており、省人化を図ったFFMは海上防衛の要となることが期待されている。
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 自衛隊員のなり手がいない。なっても意識が低い。実弾演習を「見物」して「歓声を上げる」くらいである。読売新聞記者は歓声を上げたかどうか知らないが、そういう定員を目撃して、ちゃんと記事に書いている。
 なり手がいないからこそ「省人化」が必要であり、そのための「装備」が必要だというのだが、省力化したって人手不足は解消しないだろう。
 ウクライナは男性の国外脱出を阻止して兵隊を確保している。ロシアは増員を発表して国民の反発を買った。だれも戦争なんかに行きたくない。軍需産業をもうけさせるための戦争に行って、殺したり、殺されたりしたい人間なんかいないだろう。
 読売新聞は、いまはまだ「装備移転拡大 官民協働で」と言っているだけだが、きっと「兵隊増員に民間(企業)は協力すべきだ」と言うだろう。いまでも「自衛隊で研修」ということをおこなっている企業があるようだけれど、きっと拡大する。実弾演習見学を「見物」に置き換えて楽しむ隊員では困るだろうから、いまから、そうならないように指導しておけ、という意味で読売新聞の記者が書いたのなら、それはそれで興味深いが、きっと読売新聞記者も「取材」ではなく、「見物」気分だったから、隊員の上げた「歓声」に共感して、そのまま書いたんだろうなあ。
 そういう、だれでもが思うような(私でさえもが思うような)疑問をくぐりぬけて記事が紙面化されているのだから、読売新聞は、政府の代弁さえしていれば新聞発行がつづけられると信じ込んでいるんだろうなあ。でも、こんなことを書いていて「読者離れ」を「防衛(阻止)」できるのか。ますます読者が減るだけだ。
 まあ、こんなことは、どうでもいいか。

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谷内修三
マスコミ批判、政権批判を中心に書いています。これからも読みたいと思った方はサポートをお願いします。活動費につかわせていただきます。