終わり行く夏へ「BAN BAN BAN」(KUWATA BAND)
私は幼い頃からサザンオールスターズの曲をヘビロテするタイプではなかった。
しかしながらこの曲は(サザンではないけれど)大好きで大袈裟だが死ぬほど聴いたのだ。
当時中学生になったばかりの私はNationalの赤いオートリバースWデッキでFMをエアチェックしつつ捕獲、録音に成功。
当時はカセットテープに好きな曲を集めてよくダビング編集したものだ。
今でいうプレイリスト。
お気に入りの曲にお気に入りのメーカーのカセットテープ、お気に入りの「FM STATION」付録の鈴木英人のインデックスカードにタイトルをレタリングして作り上げた渾身の一本。(80年代をご存じの方ならお分かり頂けるだろうか)
テーマはズバリ、「SUMMER」
中でも「BAN BAN BAN」は当時私にとって初夏の美しい緑をさわさわと揺らす心地よい風のような、青い空とのコントラストに輝く太陽が伏せた瞼越しに伝わるような、爽やかな夏をイメージさせてくれる素敵な曲だった。
資生堂の化粧品のCM曲だったのもあってお洒落でトレンディ、という印象も。
やがてテレビ番組にKUWATA BANDが出演するようになり、その際にギターの河内淳一のハモりと笑顔に目を奪われてしまった。
なんて楽しげに歌っているんだろう、と。
JUN-BOHこと河内淳一のサビの上パートを覚えて勝手にハモって心地よくなっていたあの頃からもう35回目の夏が巡り、終わろうとしている。
なのに、全く色褪せることなく今年も私の記憶の中に甦り、押し寄せては引いてゆく。
「別れる為に出会う二人に夏は訪れる」
恋の終焉。予感が確信に、やがてほろ苦さと涙の別れ。
失恋の曲であるのにこのさらりとした風合いと、寧ろ眩しい記憶が織り成す「彼女」との夏の日が欠片となってメロディに輝いている。
空が青すぎたり太陽が眩しすぎたりするとなんだか切なくなる気持ちと少し似ているのかもしれない。
桑田佳祐に紡がれた「純愛」が、この曲を今もなお美しく彩り続け、次の夏もまた鮮やかに象られるのだろう。
そんな思いに耽りつつ。
終わり行く夏にこの曲を。
「BAN BAN BAN」
作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:KUWATA BAND
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