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『 就職活動 』

クリスマスが終わると、二学期も終わる。

冬休みの間に、僕は一人暮らしをするための

部屋探しを始めた。

居候というのは、思った以上に肩身が狭く、

伯母の過剰な干渉にも疲れていた。

ショーコとは、卒業後も付き合っていくつもりだったから

西武新宿線 沿線で、部屋探しをした。

候補は、鷺ノ宮、井荻、上石神井の三つ。

結局、井荻の物件に決めた。

理由は、駅から歩いて5分、新築のワンルームで

家賃 54000円。駅前に、スーパーマーケットと、コンビニがあった。

はじめての一人暮らしは楽しかった。

毎週末、注文した家電が届き。最初は布団と洋服しかなかった部屋に

テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、と揃っていった。

一番嬉しかったのは、電話がひけたときである。

友達の家に、いつでも電話をかけられるからだ。

居候のときは、近くの公衆電話を使っていたので

いろいろ不便だったのだ。

引っ越しには、従兄弟の兄と、ショーコも手伝ってくれた。

兄も、ショーコのことをとても気に入っていた。

そして、いよいよ三学期。

残るは、就職活動と卒業だけだ。

僕は有名美容室を狙っていたが、

ショーコには、そういう願望がなく、

一般美容室でいいらしかった。(正直いうと、もったいないと思った)

もちろん、一番の憧れは

高校時代から、夢に見た

shima である。

あとは、PEEK-A-BOO

SASHU、ZUSSO、STUDIO V、

なとが候補であった。

一月に入り、最初にオーディションがあったのは

shimaだった。

当時は、shimaの「嶋ヨリノリ先生」

PEEK-A-BOOの「川島文夫先生」が

世界的にも有名なスタイリストだった。

まあ、受かるとは思わないが、とりあえず

受けるだけは、受けてみよう。

日本中の、美容専門学校の生徒が受けるので

何日かに、分けられた。

嶋ヨリノリ先生が山野の出身であり、

山野が大所帯の学校ということもあって

山野の生徒だけの日が用意された。

今はなき、青山のベルコモンズの近くに、

shimaのヘッドオフィスがあり、その何階かが

オーディション会場と、筆記試験会場になっていた。

僕と、同じクラスの窪内、小川の三人で行った記憶がある。

同じ15組から、他にも数名が受けた。

その日、会場に着くと、整理券を渡され

けっこう遅い時間になった。

三人とも、まあ"記念"だと思って

気軽に受けようぜ!そんな感じだった。

ドトールなどで、時間をつぶし

余裕を持って、時間前には着いていたが、時間がかなり圧していて

予定より二時間近く、遅いスタートになった。

筆記試験を受け、その後順番にオーディションを受ける。

僕はあまり緊張はしない方だが、

それでも雰囲気に圧倒されそうになった。

shimaの、各店舗の、店長、副店長、

そして、代表の嶋ヨリノリ先生と、弟のヒデノリ専務がいた。

質問は、ほとんどヒデノリ専務がして、

あとは興味を持ってくれた店舗の方が、補足で質問をする。


僕は、何を聞かれても、ハッキリ、堂々と言えばいい。

それだけを心がけていた。

何をどう聞かれ、どう答えたのか全く覚えてないが

まあ、ダメだろうなぁ…と思った。

先に終わったやつらが、歩道に集まって、

あぁだった、こうだったと話していた。

窪内と、小川を見つけた。二人ともしょげていたので

三人で、美味いもんでも食って帰ろうぜ!

僕にとっては、はじめての敗北感でもあった。

つづく。

一昨年、横浜山手にて。



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