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第二の人生晴朗なれど波高し~35年目のラブレター~メディアに疲れた時に

 読み書きのできなかった祖母、高等小学校を途中退学させられた母、母の反対を押し切って大学に進んだ私。
 時代と社会をそのまま引き受けているような、母娘3代。ただ一人残された気分の私に、ピッタリの試写会ではないかと思いながら、WESTファンに誘われて行ってきました。

『35年目のラブレター』


 戦中・戦後の混乱期に、貧困の故に「いじめ」を受け、小学校低学年のうちに通学を止め、その為「読み書き」ができない西畑保さん(本名)の実話を、毎日新聞記者で、ノンフィクション作家の、小倉孝保さんの同題の本にまとめたのが原作です。
 定年から現在の西畑さんを笑福亭鶴瓶、その10歳下の限りなく優しい妻・皎子を原田知世、出会いから結婚後数年までの西畑さんをWESTの重岡大毅、若い皎子を上白石萌音、がそれぞれ演じています。 
 読み書きのできないことをわかっても雇ってくれて、一人前の寿司職人に育ててくれ、結婚相手まで見つけてくれる、親方を笹野高史。
 夜間中学の先生は、安田顕。
 近所のオバさんにくわばたりえ、いい味出してくれてます。
 あと、西畑さんの娘のダンナ役で、『光る君』の百舌彦を演じた本田力が独特の軟らかな存在で登場。

 悠久の歴史と自然に溢れた奈良公園。興福寺の五重の塔。鹿。私の大好きな風景が、幾星霜変わらぬ姿で、若夫婦の時も、晩年になってからも、デートや散歩の場面で、二人を暖かな光で包んでくれます。
 そこで交わされる上方言葉。
 背景が奈良だと、こんなに柔らかく心に入ってくるのだなぁ~と、本来の奈良贔屓が、余計に心を洗ってくれます。
 凄まじい勢いで変わっていく価値観の中で、変わらない大切なモノがあることに、はっとというより、ほっと気づきます。

 泣ける場面は沢山あって、これからご覧になる方の為に書かずにおきます。

 ただ、原田知世さんが晩年を演じても、美しく、可憐で、若い時期の上白石萌音ちゃんとしっくり繋がるのですが、鶴瓶さんにはもったいないなァと思っちゃうのです。しかし、年老いても、面白可笑しく、可愛らしい男といえば、やはり鶴瓶さんだしなぁ~
 で、調べたら、クリスマスケーキ‼️(これは映画の画面に説明がいるがな…)なんて言われて、25歳の皎子さんがお見合いした時、保さんは35歳なんです。だから、ずいぶん年の差があるように見えて構わないのです。
 重岡くんと萌音ちゃんが、ちょうどいいカップルに見えるので、原田さんの可愛らしさが目立つのかもしれません。   
 
 しかし、クリスマスケーキ=25過ぎたらもう売れない、なんて酷い価値観の時代があったものです。(うっすら知ってるような…言われたような…)そこから、まだ半世紀も過ぎていないと思うと、戦後(死語⁉️)80年の、あらゆるモノの変化・変遷の例として、わかりやすい例です。
 赤ちゃんが生まれてすぐに、モノごころつく前に携帯を握って、携帯に子守りされてる現場を、スーパーの長~いレジ前の列で見かける時代。
 こうなると、文字は立派なメディアで、読み書きができない人の話って、そんなことありえるの?と、思う若い人も、重岡君や萌音さんのファンの中にはいるかもしれません。
 
 自分がこんなに素直な心になれるのだと、優しい涙に癒される映画です。
 こんなシステムがあるのだなぁ~とこの度私も知ったのですが、まだ間に合う試写会もあるみたいです。
 これを書いている途中についた、小倉さんの原作を読み始めました。
 想像を絶する貧困。西畑さんは、亡き母より年下。
 試写会の二つの宿題のうち「ありがとう」の方が、やっと書けそうです。この映画と、西畑さんと、良い時に出会えました。

 2020年に西畑保さんは夜間中学校を卒業。現在、「春日夜間中学校を育てる会」の会長として、全国で夜間中学校設立の意義について講演活動をしているそうです。
 映画の中でも、いじめ、ひきこもり、今後は日本の(真の)国際化などがあり、夜間中学の必要性は十分にありそうです。そんな視点も語られます。  

【母に「産んでくれてありがとう」などと思わなかった中学時代。あしながおじさんと赤毛のアン以外に私を支えたのは、狐狸庵シリーズと遠藤周作先生の多くの基督教文学、殊に中年を過ぎても繰り返し読んでいるのは、『聖書の中の女性たち』です。】

『メディアに疲れた時に』


 試写会に出掛ける前夜、日付を跨いで1:00過ぎまで、私は例の記者会見を見ていたのです。もちろん、色々な雑用をしながら。時々、他のチャンネルも見ました。
 
 質疑応答の内容に興味があったわけではなく、その展開と、経過が気になった為です。
 そして(どこか阿呆な律儀さを持つ)私は、ただ一人の人物が、何を聞かれ何を答えるか、気になって仕方がなかったのです。(バカだなァ)
 遠藤龍之介フジテレビジョン副会長。ご存知の方も多いと思いますが、遠藤周作先生のたった一人のお子です。
 周作先生によく似たお顔を見たかったのかもしれません。その理由で見ると、ずいぶん酷い画像でした。

 龍之介氏は、血圧が上がってしまっていたのか(上がるだろう…)、ずっと赤い顔で時々ハンカチで汗をしきりにぬぐいながら、それでも顔を上げ続け、質問者の顔に視線を向けて、答えようとした姿勢を見せてくれました。壇上の5人の中で、一番逃げていなかったと、思います。
 私としては(勝手ながら)まるで姉妹みたいにほっとしたのです。
 もちろん、遠藤周作ファンとしてです。
 
 何と言い表したらいいのでしょうか、何でしょう〜アレは‼️
 質問する方も方なら、答える方も方で、謂わば「五十歩百歩」。一部のあの方たちは、名前を言って質問することに、怖さはないのでしょうか。

 【メディアとは】…WEB辞書
 情報を伝達する媒体・手段・技術。一般大衆を対象とするマスメディアとしては、従来、紙を媒体とする新聞・雑誌・書籍、そして電波を媒体とするテレビ・ラジオが主流だったが、現代社会においてはインターネットもマスメディアとしての役割を担っている。

 現代、文字を使えるものは、全員、「物書き」の権利と義務を持ち、発信者と受け手は、相互責任を負うことになります。
 誠に恐ろしい時代が来たものです。

 ただ一人の人に、一文字一文字に心をこめ、ラブレターを書くために、夜間中学に7年間通った男の物語が、混乱で濁った心を洗ってくれています。
 
 


 

 
 


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