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〜訂正・大河『光る君へ』第17回「うつろい」雑感(見逃した方もどうぞ)〜

 994年。都は、疫病のまん延で惨状を窮めています。生死の境から戻った、まひろ(吉高由里子)が、スッキリと庭を眺める場面から、始まります。
 乙丸(矢部太郎)はそんな「姫様」を見て、嬉しくて、悲田院からまひろを連れ帰り、一晩中看護したのが、大納言道長様(柄本佑)だと、教えてしまいます。
 回想で、柄本・道長、渾身の「逝くな、戻ってこい❢」の声。で、タイトル。
  
 内裏では、道長が、兄で関白の道隆(井浦新)に、悲田院の惨状を伝え、新たな対策を❢と訴えますが、「お前は道兼と組んで、俺を追い落とす気か。」と、言われてしまう。こんな有様では、道隆、先は長くない~やたら水を飲み、「飲水病」(糖尿病)の危機的状況が現れています。
 
   高松殿では、道長の第二夫人、源明子(滝内久美)が可愛い赤ちゃんを抱いて幸せそう。兄の源俊賢(本田大輔)に、「次は女子を産め、女子なら入内させられる。」と言われてます。高貴な女人は、出産までも差配される、辛さがあります。
 
 俊賢は、一条四納言の一人。父は源高明、祖父は醍醐天皇。藤原ばかりの中、一人「源氏」で、才覚、人物、共に優れ、かつ穏やかな人柄で、前年、蔵人頭(天皇に近侍)であったので、一条天皇にとって心強い支えだったと思います。
 帝が、道隆に「下がれ」と言った後に、大石さんもそう考えたかと、俊賢の意見を問う、演出に思いました。道長の義兄でありつつ、「源氏」の誇りを、どこかで見せてくれそうで、実資同様、先の演出の楽しみな役柄です。
 
   道長は、私財をなげうっても、「救い小屋」を作りたいと、嫡妻倫子(黒木華)に話す。倫子は、「私の財を使ってください。」と言います。
 ここでナレーションに、オマケ解説。藤原北家とはいえ、三男の兼家の五男の道長より、一世源氏(親王)待遇で、三帝に渉る左大臣雅信の跡取り娘の、倫子の方がお金持ちです。
 あっと➖、私は、やっと気づいたのです。源氏物語完成の真の立役者は、倫子に違いない❢~と。白い紙に、54帖も書かれた源氏物語は、ただ一部のみでは世に広まるはずもなく、彰子のサロンで大量筆記されたわけです。
 ドラマの中では、白紙を、まひろも、さわ(野村真純)も、どんどん使ってますが、当時は白紙は貴重品。清少納言が、定子から白い紙を綴じた冊子をもらった喜びを、他ならぬ『枕草子』に書いてます。
 
 太っ腹の奥さんに、悲田院に行った夜の行き先を尋ねられ、道長は、当たり前にしらばっくれる一方で、百舌彦(本田力)に、まひろの様子を見てこい、と命じます。百舌彦の口が、いつまで、どの位、固いでしょうか、案じられます。
 百舌彦が、乙丸に気づかれたくて、犬の真似をするのが、面白く、結局まひろにも気づかれ、三人で懐かしいと、言い合う場面が、この回、最もほっとする場面でした。

 道隆のアルコール依存状態に、あきれた息子二人の廊下の会話。伊周の新しい彼女は、先太政大臣の娘「みつこ」❢これ伏線❢この女性、花山天皇が愛した「よしこ」の妹、さらに、ききょう(ウイカ)といちゃついていた、四納言の一人、斉信(金田哲)の妹でもあります。

 道隆は病がつのり゙、とうとう帝の前で倒れ、晴明(ユースケサンタマリア)に寿命を延ばせ、と頼む(が、内心相手にされず)。

 995年。道隆は、年号を「長徳」に改める奏上をして許される。陣定では、実資(ロバート秋山)が「ちょうどく・長毒」に通じると、中関白家どころか、帝のことまで「未熟」「心配」と大声で繰り返し、それを帝と定子が陰から聞いている。暗愚な君ではない帝が、どう思うか

 帝の母、皇太后・詮子は、兄・道兼と、弟・道長を呼び、「次の関白は道兼兄上、好きじゃないけど、伊周よりはまし。道長、お支えして。」と宣言。
 一方、定子は、兄・伊周に、「内覧になれ」と言う、政治家ぶり。

 まひろは家で『荘子』を書き写している。手元「胡蝶の夢」の文字。そこに、さわが訪ねて来て、石山寺行の考え違いを詫びて、友情を誓い合う。まひろに返していた手紙も、さわは書き写していて、そうして「まひろに追いつきたい」という。

 さわの書写に励まされ、まひろは思う。

「何を書きたいのかわからない。でも、筆を執らずにはいられない」

  手元の文字は、なんとか「こころ」だけ、読めた気がして??※
 「胡蝶の夢」を参考に「こころ」を頼りに、この場面にピッタリの紫式部先生のお歌↓

心だにいかなる身にかかなふらむ  思ひ知れども 思ひ知られず
(私の心は、どんな身の上になれば、これが真実と思えるのかな、どんな身の上でも真実はない、とわかっているけれど、やはり真実の自分はどこか考えてしまう)

 道隆は、狂気じみ、娘の中宮定子に、「皇子を産め、皇子を産めば、帝は我が家のものだ。」と迫り、帝には「伊周を関白に」と、御簾を挙げて迫り、大騒ぎ。

 〜忘れじの行く末までは難ければ  今日を限りの命ともがな〜
 道隆は、出会った頃を思い出し、貴子(板谷由夏)の名歌を口に出し、貴子に手を握られながら、世を去ります。
 父の兼家の臨終に似た演出ですが、恋を歌にして愛を紡ぐ、平安貴族の優雅さの演出で、いいなぁ~と思います。
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※「レコの館」様からご教示いただきました。
「こころ」ではなく、「こひ志な盤」と読めます。
恋ひ死なば たが名は立たじ 世の中の 常なきものと 言ひはやすとも
 古今集 清原深養父(清少納言の曽祖父)
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色々に深読みできる歌をNHKさん、出してたんですね。
ありがとうございました。



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