見出し画像

ダメ男、ロンドンを満喫する

さて、時は2011年。姪っ子に会うために人生初の海外ひとり旅に行った時の話の続きです。
前回はイギリスはケンブリッジに着いたまでを書いたのですが、今回はダメ男のイギリス滞在話をば。


◆ さしあたって、イギリスらしい場所に行く計画をたてる

まァね、せっかくイギリスに来たんだから、とにもかくにもイギリスらしい場所に行ってね、友人とかにも「ああ、イギリスに行ってきたんだな」とわかるようにしようと、ね。

しかし具体的には、となると、とくに思い当たらない。
アタシにとっては2011年が初イギリスでしたが、以降、都合10回以上イギリスに行っている。どころか2012年からは半年ほど滞在までしているくらいです。
にもかかわらず、大抵の人がイギリスといって思い浮かべるであろうバッキンガム宮殿にもコッツウォルズにも行ったことがない。ビッグベンやロンドンアイは外観はもちろん見たことはあるけど、入ったことは一度もない。
つかね、どうもアタシってヤツはひねくれているのか、そういう「如何にも観光名所でござい」みたいなところに極端に興味がないのです。

結局アタシが興味があるのは「市井の人の暮らし」でね、これは日本国内で旅行や出張に行った時もそうなんだけど、ごく普通の人が当たり前のように利用している街のスーパーや市場の方がはるかに興味を惹かれるのです。
だからね、先に結論を書いちゃうようだけど、イギリスで何が面白かったかとなると、スーパーとかホームセンターに行ったことになってしまう。
しかしこれでは、自分的には十分でも周りから見ると「何のためにイギリスくんだりまで行ってきたの?」と思われてしまう。
何を思われようが別にいいんだけど、何しろアタシは関西人です。いわばサービス精神ですよ。そういうことをやって喜ばれるなら、やらないよりはやった方がいいかと。

そこでふと「スタジアムツアー」ってのが浮かんだ。何たってイギリスと言えばプレミアリーグの国じゃないかと。
これも説明が必要になるのですが、アタシはスポーツ全般、わりと何でも好きなのですが、特別サッカーが好きなわけじゃない。つかそんなによくは知らない。
好きなスポーツナンバーワンは、もう、これは野球に決まってる。ついでに書いておくならご贔屓チームは阪神タイガースです。
阪神タイガースの本拠地は言わずとしれた甲子園球場ですが、もう数え切れないくらい、足を運んだ。

だからこそわかるのですが、プロスポーツのホームグラウンドってのは、もうそれだけで凄いものなのです。何というか、スタンドの壁という壁に百数十年分の歓喜と興奮が染み付いている。
もし、イギリスでスタジアムツアーなるものに行くなら、チェルシーのホームグラウンドであるスタンフォードブリッジしかあり得ない。何しろここの開場は1876年。日本ならまだ明治時代です。当然改装を重ねてるとはいえ、絶対に、独特の空気があるはずだ、と。

ケンブリッジの妹夫婦宅に着いて、アタシはさっそくネットでスタジアムツアーの予約をした。んで、偶然にも翌々日の予約が取れたんです。


◆ リバプールにやって来た、ヤアヤアヤア

翌々朝、アタシは妹にクルマで駅まで送ってもらい、ロンドン行きの電車に乗り込みました。
にしても、イギリスの朝は気持ち良かった。どうしてもイギリス=霧のイメージが強かったのですが、ちゃんとイギリスにも晴れの日はある。当たり前だけどさ。

約1時間ほど経った頃、電車はロンドンに到着した。昨日、散々迷ったキングスクロス駅。
・・・じゃない!え?ここ、どこ?終点だから降りるのを間違えたってことはないし、どういうこと?
案内板にはリパプールストリート駅、とある。リバプール?あの、ビートルズの?いやいや、リバプールってロンドン市内ではないのはもちろん、イギリスのかなり西の方にある片田舎のはずなのに。
ま、いいや。こんなの昨日の大惨事に比べりゃどうってことはない。こまけーことはいいんだよ。それよりもスタンフォードブリッジの最寄り駅であるフラムブロードウェイ駅に向かわなくては。

ふむふむ。なるほど。地下鉄を乗り次いで行くのか。ま、どうせキングスクロスから行っても一本じゃ行けないんだし、どこで降りようがおんなじだわ。


◆ マクドナルドの衝撃

スタジアムツアーの開始には時間があるし、まだ朝飯を食ってなかったので、リバプールストリートの近辺で何か食べようと。

しかしさ、前回も書いた通り、とにかくアタシは英語はからっきしのダメ男です。ちゃんとしたレストランはどう考えても敷居が高すぎる。
目の前にマクドナルドが見えた。そうか、マクドナルドなら最悪メニューを指で指しながら注文出来るし、手慣らしというか手始めとしてはうってつけなのではないか。

つか、何を食べよう
掲げられたメニューに目をやる
ん?これは日本のマクドナルドの朝マックにはないな
ならばこれだ!

目論見通り、マクドナルドの注文は英語がダメなアタシでも何とかなった。
で、何を注文したかというと。


バーガー状にはなっていない、プレートにバンズやソーセージが乗ってるヤツ(ビッグブレックファスト)は今は日本でもあるけど2011年当時はなかった。ま、所詮はバラバラにプレートに乗ってるだけだから味の想像はついてたんだけど、やっぱ、何というか、微妙に違うのですよ。
マフィンの食感も、ソーセージの味付けも、あの食べ慣れたものとはほんの少し違う。で、どっちが美味いかというと、これはどう考えても日本だなぁと。


◆ フルハムロードと言えば

前日の大惨事が嘘のように、地下鉄の乗り換えも実にスムーズに、フラムブロードウェイ駅に到着しました。
なるほど。このフラム?フルハム?ロードとかというのを真っすぐ行けば目的地であるスタンフォードブリッジに到着するのか。

しかし・・・、フルハムロード?何か聞いたことがあるな。フルハムロード、フルハムロード・・・フルハムロードよしえ!!
と聞くだけでもこの時代を生きてこられた方にはただちに「ロス疑惑」だの「疑惑の銃弾」だの「ターキー(水の江瀧子)」だのが思い浮かぶはずです。ま、ターキーは関係ないっちゃないから(噂された実子ではなく長兄の息子)一緒にされちゃかわいそうだけど。
それにしても、フルハムロードって別に商店街でも何でもなくて、何の変哲もないただの<道>なんですよ。何でこんなマイナーなストリート名を屋号に使ったんだろ。

よしえ!何でだ。よしえ!答えでくれ!!


◆ 英語がわからないってのはかくも哀しい

無事スタンフォードブリッジに到着したアタシはスタジアムツアーに参加出来たんだけど、うーん、あんまり書くことがないんですよね。

ツアーガイドは実に面白おかしく解説してくれたんだけど、何しろアタシは英語がまるでダメなので何を言ってるか基本わからない。
英語だけじゃなくてチェルシーの知識もほぼゼロなのもどうしようもない。唯一知ってるのはドログバくらい。それも前年の日本代表の強化試合で田中闘莉王と接触した際に骨折した、ということがあったので知ってただけです。
それでも、試合をやってないにもかかわらず、スタンドからは想像を超えるような<空気>を感じ取ることが出来たし、ロッカールームも実にすごかった。ま、アタシはドログバのユニホームを見て喜んでいただけだけどさ。
せっかくなんで、この時撮った写真だけ貼っつけておきます。


◆ 衝撃の場所との出会い

スタジアムツアーが終わったのは昼過ぎ。ケンブリッジに帰るには早すぎるし、何より妹はまだ仕事中なので駅まで迎えに来れない。
ならば、せっかくロンドンまで来たんだし、もうちょっとブラブラするかっと。

ただ、何の目的もないわけで、こうなりゃメク・・・あ、この表現はダメだ。とにかくデタラメに、テキトーな地下鉄の駅で降りてやれ、と。
アタシが「ふと」降り立ったのは、ピカデリーラインのキングスクロス駅のひとつ手前のラッセルスクエア駅。もちろんこの駅周辺に何があるかまったくわからずに降りた。でもさすがにデタラメに歩き回るのも限界があるので、ついにGoogle発動。

お、わりと近いところに大英博物館があるじゃないか
別に興味はないけど、名前くらいは知ってるし、ここにするか
何より「入場料無料」ってのがいいやね

約3時間後。アタシは放心状態で大英博物館を後にした。博物館に来てここまで「精も魂も使い果たした」のは初めてだった。
とにかく、形容が思いつかないくらいすごかった。いったい、日本で行ったことがある博物館は何だったんだ、と思うほどすごかったんです。
大英博物館。ここは一部からは「泥棒博物館」と言われるくらい、古今の、世界中から歴史的な<ブツ>が収められています。誰でも知ってるロゼッタストーンやイースター島の巨石像以外にも、ミイラや土偶はもちろん、いったいどれだけあるんだ、というほど「人類の歴史」が詰まっている。

だからエネルギーがとにかく、とんでもない。たしかに敷地面積も広いんだけど、歩き回って体力的に疲れた、というのではないんです。
ただ、もう、エネルギーにあてられて、というか、エネルギーを吸い取られてボロボロになったというか。

あれから何度も何度も大英博物館に行ったけど、もし、ロンドンに行って「ここだけは行っておけ」となったら、アタシは大英博物館を推す。ここだけは絶対に日本では体験出来ないから。


◆ ロンドンは街歩きも最高だったでやんす

大英博物館を後にし、放心状態から開放されて我に返ったアタシはキングスクロスに向かって歩き始めました。

大英博物館からキングスクロスまで、地下鉄で言えばひと駅ちょいです。だから歩いて歩けんことはない距離なのですが、まァ、普通はやりませんわな。
でもこの時ばかりは、上手く言えないけど、歩きたいというより「しばらく乗り物に乗りたくなかった」んです。
これはアタシの癖というかね、たとえば良い映画を観た後とかも、何だか歩きたくなる。電車とかに乗ったら感覚が消えてしまうんだけど、歩きなら余韻に浸った状態をキープ出来る。

ああ、何て気持ちいいんだ!

途中からヘッドホンで音楽を聴きながら歩いた。
アタシはお古い邦画が大好きな人間ですが、たまたま、スマホに古い邦画のサントラを詰め込んでいたのです。
正直これらのサントラは、少なくとも<日本>での「街歩きBGM」としてはまるで適さなかった。ところがロンドンは何たって街並みっつーか建物が古い。だからか、邦画(=日本で作られたもの)であるにもかかわらず、ロンドンでの「街歩きBGM」に恐ろしくハマったんです。
何しろアタシが愛する邦画はすべて公開から50年以上経っている。日本にはもう、50年前の景色がそのまま残っている場所なんかあるはずがなく、つまりはこうしたサントラが合う場所は地球上にはないと思っていたんです。
しかしロンドンは違った。ハマりすぎるくらいハマる。

おいおい、冗談じゃないよ。何だこの街は。これ、もしかしたらロンドンこそアタシが追い求めた夢の街(日劇のような重厚なオールドスタイルの建築物とスマホが同居する世界!)なのではないか?


◆ 今回もぽんぽこも偽クヒオも出番なし!

てなわけで明日に続きます。明日は料理編になります。