【塾生インタビュー企画 私たちの軸足#12】~ネットワーク科学からみる社会~
このnoteは、薮中塾生の普段の活動や専門性を発信する企画の第12弾です。
編集部の柴田紗良が担当します!🌻
さて、今回私がインタビューさせていただいたのは、薮中塾6期のディレクター(以下、6D)の一員として活動していた、大木有(おおきゆう)さん。
大木さんは5期に入塾し、リーダーとして、6期生を引っ張ってくれる、頼もしいお兄さんです。
現在は京都大学大学院総合生存学館修士2年で、4月からは博士1年になります。趣味は読書と旅行だそうです!
ネットワーク科学
ネットワーク科学を専門として、「ソーシャルネットワーク」についての研究を2年間していました。
研究を通じて「複雑系を通してみる世界」について考えてきました。
まず「複雑系」を解説すると、人々の社会的なつながりを指すソーシャルネットワークも複雑系の一種です。
人々の社会関係は2人の関係性だけに着目していてもそのメカニズムを理解することはできません。
ソーシャルネットワークでは無数の人がいて、人々の相互依存性がその特徴です。
ネットワークはお互いがお互いに相互依存しあっている複雑系を表現する方法です。ソーシャルネットワークで例えると、複数の人が1人に影響を与えていることもありますし、1人が周りにいる10人、100人に影響を与えられていることがあります。
このような複雑系を点と線で構成されるネットワーク使って、その特徴やダイナミクスを理解するための学問がネットワーク科学です。
「複雑系を通してみる世界」とは、「個」に着目せずに、「全体」に着目すること、つまり、場にある全ての関係性に着目することで見えてくる世界です。
例えば、学校での「いじめ」などを考えると、「いじめっこ」と「いじめられっこ」という個人以外に教室に40人ぐらい生徒がいますよね。そこで、お互いに関係し合っている。
そして、その全体の相互作用の結果として、「いじめ」という問題が発生してくる。
このようにある出来事を複雑な系、システムとして捉えることで今までとは違った世界の見方をすることができるということを研究を通じて実感してきました。
今の大学院に入学しようと思った動機は、人々のつながりについて研究したかったからです。
学部時代に台湾でインターンをしていた時期があるのですが、そこで感じたことは、台湾では人間関係をとても大切にしていて、それが台湾と日本で大きく違う、ということでした。
日本人は比較的、人間関係に淡白な傾向があるように思うのですが、台湾では大切な人たちと過ごす時間をとても大事にしているな、と感じました。
台湾での生活を経て、人間関係が人々の幸福にどのような影響を与えているかやどのように人々のつながりが構築されているのかについて考えたいと思うようになりました。
台湾での出会い
元々所属していた学生団体で海外インターンを派遣し、また海外からきた学生をインターンとして日本の企業に受け入れるというマネジメント活動を行っていました。
その中で日本企業で活躍する海外から来た学生から刺激を受け、自分自身も海外インターンに行きたいと思っていました。
台湾企業をインターン先に選んだ理由は、業務内容が日本向けの営業で、ネイティブとして日本語スキルを活かせるかと思ったからです。
LED電球の製造メーカーに勤めていたのですが、営業職についていました。
インターン先企業の新製品を取り扱って、日本市場に売っていく業種でした。
業務内容としては、家電市場の調査をし、どういった顧客層に対して製品が売れるのか分析を行い、営業戦略を立案します。
そして電話・メールで実際に商談のアポイントメントを取るということをしていました。
台湾での経験は、私の価値観をものすごく変えた出来事になりました。
人々の繋がりの大切さに気づいたのが、台湾でした。
自分がインターンを行っていた村は、田舎で日本人もそんなにいない場所でした。
その当時は、英語も中国語もあまり話せなく、現地の人とほぼ会話ができない状態でした。
そういった場に放り込まれてると、日本にいるときのように周囲の人々の関係性を築くのは難しく、会社の中で、日本語を話せる人ととしか深い関係性を築くことができませんでした。
そこで感じたのは「社会的孤立」でした。
例えば、ある特定の社会関係にその人の生活が依存しているような場合に万が一その関係性を失う、ということが起きてしまったら、社会的に大きなリスクを受ける人が確かに存在するということをふと思いました。
私も台湾での生活で「社会的孤立」を実感し、意識するようになりました。
今までは、自分の周囲の人との人間関係に大きな注意を払ってこなかったのですが、その価値観が変わり、今の研究をしようと思ったきっかけにもなりました。
学部時代には工学部で機械学習を使った研究を行っており、その際に実感したデータサイエンスのアプローチの有用性とソーシャルネットワークに対する関心が合わさって、現在の専門であるネットワーク科学の研究に取り組むという進路の決定をすることになりました。
ネットワーク科学と薮中塾
薮中塾の運営をするにあたって、後期の勉強会テーマを決める為に、ワールドカフェとピッチ大会を実施しました(ワールドカフェ・ピッチ大会についての記事はこちら)がワールドカフェ、ピッチ大会の構想はネットワーク科学の視点から発想しています。
後期の勉強会担当を決めるに当たって、まず塾生それぞれにどのような勉強会を実施したいのか考えてきてもらいました。
次に、その塾生をランダムに振り分けてお互いのアイデアを深める対話をワールドカフェを通じて実施します。
そして、他の塾生からの意見を踏まえて、最終的なアイデアをピッチ大会を通じて発表し、その発表内容に対して自分が勉強会担当として実現したい勉強会のトピックを4つ選んでもらいました。
つまり、1人の塾生が自分も含めた4人の塾生のアイデアを選択することを意味します。
これは、ある人から4人につながる線が引かれたネットワークとして考えることができます。
25人の塾生全員分の希望を同様に考えれば、25人の塾生同士の勉強会の希望に関する関係を表すネットワークを構築することできます。
そのように構築されたネットワークには、類似したテーマを提出した塾生同士は近い選好性を持つため、お互いのトピックを選び合うような構造を見出すことできます。
このような構造を希望調査結果から構築されたネットワークから取り出して、勉強会担当チームを構成するということが後期の勉強会担当の振り分けの際に目指したことでした。
今後に向けて
来年度(今月)から博士課程の1年生になるので、一人前の研究者として、自らの専門研究をしていきたいと思います。
今まではソーシャルネットワークについて研究をしてきましたが、その研究を活かし、さらに社会に適用できる、「医療機関同士の関係性」について研究していきたいと思っています。
今後超高齢社会の中で医療機関同士の連携により効果的な医療提供を行ったり、ある医療機関が地域から無くなることが人々に与える影響を理解したりすることがより大切になってくるかと思うので、そういった研究にネットワーク科学を武器に取り組んでいきたいと考えています。
(5期時代の薮中先生と大木さん)
【インタビュイー】大木有(おおきゆう)
【聞き手・ライター】柴田紗良(しばたさら)
第12回インタビュー企画では、ネットワーク科学を専門にしてらっしゃる、大木さんにお話をお伺いしました。
実際に自分が経験した事柄から研究の道筋を決めようとした姿勢から、やはり私も積極的に色んな経験を積んで自分の「好き」や「興味」を増やしていきたいなと思わせてくれました!
私からのインタビュー企画記事はこの記事にて最終回になります♪
今までお読みくださりありがとうございました!
これから更にパワーアップする7期以降のnoteに是非期待してください☺️
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