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「キーエンス解剖」を読んで

最強FA向けセンサー企業「キーエンス」。

製造業向けにAI導入支援を行っていると、否が応でも目に入る、いや目に入るどころではない謎の"強さ"を感じる企業、それがキーエンスである。

もちろん今は就活でも大人気な企業であるし、大阪大学時代の友人が内定していたりと名前は知っていた。

しかし、その表面に浮き上がってくるイメージといえば「給与が抜群に高い」「組織としての営業力が強い」くらいのものであった。

元々興味があったため、書店で並んでいるのをつい手に取ってしまった。


そもそもキーエンスとは?

「キーエンス株式会社」(KEYENCE CORPORATION)は、世界的な自動化技術と精密測定機器の開発・製造を手掛ける。1974年に設立され、大阪府に本社を構えており、FA(ファクトリーオートメーション)分野におけるリーダー企業として有名。特にセンサー、測定器、顕微鏡、レーザーマーカーなどの高精度かつ革新的な製品を提供している。

特徴1:革新的な製品開発

キーエンスは、製造業の自動化や効率化を支える先進的な技術に特化しており、高性能なセンサーやカメラ、制御機器を市場に供給しています。特に「FA用センサー」や「産業用ロボットビジョン」は、多くの製造ラインで活用され、信頼性の高い製品として評価されています。

商品ラインナップ
(出典:キーエンス公式HP)

特徴2:営業・マーケティング戦略

キーエンスは、営業スタイルが独特で、技術知識を持つ営業担当者が顧客に直接ソリューションを提案する「技術営業」が有名である。これにより、顧客ニーズに迅速に対応し、カスタマイズされたソリューションを提供できる体制が整っている。さらに商品企画部門との連携により、顧客の課題を商品開発に結びつける仕組みも整えていたり、顧客の昇格や異動などの初見では驚くような詳細な情報を管理する社内システムもあり、言及し始めたら枚挙にいとまがない。

特徴3:ファブレス・製造アウトソーシング

キーエンスの特徴的なビジネスモデルの一つに、自社での製造を行わず、製造は外部に委託する「ファブレス」経営が挙げられる。しかし、実は量産体制を確立するための工場を子会社「キーエンスエンジニアリング」として所有している。完全ファブレスではなく自社内で量産までのトライアンドエラーが行えることで、商品開発から提供までのスピードを落とすことなく、量産体制が整うまでの初期の製造ロスも大幅に減らせているようである。

特徴4:グローバル展開

キーエンスは、日本国内だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各国に拠点を持ち、グローバルに事業を展開している。1985年にアメリカ現地法人 KEYENCE CORPORATION OF AMERICAを設立したのを皮切りに、現在では世界46ヵ国250拠点で海外売り上げ比率が60%を超えているレッキとしたグローバルカンパニーである。(ちなみに1985年当時は日本法人は「リード電機」であり、先に海外法人が「キーエンス」の屋号を使用したらしい。)

企業データ

  • 設立:1974年

  • 本社所在地:大阪府大阪市

  • 主な製品:センサー、測定器、顕微鏡、レーザーマーカー、FA用カメラなど

  • 従業員数:12,286人(2024.3月時点)

  • 売上高:9673億円(2024.3月期 決算資料)f

  • 営業利益率:51.2%(2024.3月期 決算資料)

  • 時価総額:17.3兆円(2024.9.27現在。日本4位)

キーエンスの業績推移
----  出典:MONEY PLUS. ----
「年収ランキングの常連「キーエンス」とはどんな会社なのか」

高収益を生み出す企業体質

キーエンスが50%以上の営業利益を維持し、平均年収2000万円をゆうに超える高収益企業になる要因は①企画力と②開発力③直販営業の3軸が全て高いレベルで連携し合えているから成り立っているのだと痛感させられました。

自分が経営をする上でも学べることは非常に多かったです。

・組み合わせとそぎ落としで、他社と比較できない価値を作る
・顧客の深いニーズを大切にしつつ、顧客の目先の欲求に振り回されない
・多少コストがかかっても、即対応・即納を継続し業界全体の信頼関係を構築する

その上で、それらを実現するために以下のような状況を作っていた。

・経営の意思決定が明確(可能な限りルール化)
→属人化を防ぐ・意思決定軸が同じのためメンバーが現場で判断が可能
・個人への成果主義を一定残しつつ、会社全体の業績に個人の賞与が変動する仕組み
→あくまでチームプレー。個人に閉じず、会社全体の利益を考えた行動を促進
・高いレベルでの目的意識が生まれる仕組み
→口頭伝承だけでなく、「ガイホー」など、目的を明確にするためのコミュニケーションが生まれる仕組み作り

▼ガイホー(外出報告書)は出身者の方のnote参考

本書を読んだ感想

この本を読み終わって最初に感じたことは、「当たり前のレベルが非常に高い」と言うことである。

最初は創業者である滝崎氏の強烈なリーダーシップによる属人的な成長かと想定していたが、むしろ反対であった。組織レベルで仕組み化が行われている。

瀧崎氏本人も言っているが、いわゆる「カリスマ」ではないらしい。むしろスーパースターの存在は現場からの顧客のニーズの吸上げなどに逆効果であり、アベレージバッターの方がキーエンスには欲しいと明言している。

個人的に増収増益をしていく成長する企業を牽引してる代表というのは、創業者がカリスマ性をふんだんに発揮して成長していくイメージがある。

・永守重信(旧日本電産)
・孫正義(ソフトバンクグループ)
・三木谷浩史(楽天グループ)
・前澤友作(zozo)

海外に目を向けても

・イーロンマスク(PayPal, SpaceX, Tesla)
・スティーブジョブス(Apple)

というふうに、有名人が何人も思いつくであろう。(そういう例しか情報が入ってこないという側面もある)

そんな中で、滝崎氏は「創業当時から自分がいなくても会社が回るように、ずっと考えてきました」とあり、とにかく意思決定のルールを明確にし、組織として強くしていったというところが学びであった。

個人的にどのようなリーダーシップの出し方が得意なタイプか、正直会社を大きくする過程でわかっていくかなと思っている側面もあるが、どのようなチームの引っ張り方があるのか、創業者の伝記をもっとたくさん読んでみたいと思うようになった。

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やぶれん
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